私たちのカンボジア体験
投稿いただいた原稿のすべてが掲載される訳ではありません。
当コンテンツにふさわしい内容のものを掲載致します。
又、原稿も一部変更させて頂く事がございます

カンボジアの素顔を垣間見て(上智大学「緑陰講座2011 in CAMBODIA」参加報告)

上智福岡高等学校2年 多田 匠

僕が緑陰講座の案内に目を止めたのは7月初めだった。僕は講座の内容に強く惹かれ、応募した。その後、6人のメンバーが決まり、7月12日には上智大学の丸井先生が本校に来られた。先生からクメール語やアンコールの遺跡群について色々と教えて頂いた。その後、実際にカンボジアに行くまでは1ヶ月以上もあり、待ちきれないつもりでとてもそわそわしていた。長い夏休みもあっという間に過ぎ、いよいよ出発日となった。長時間の飛行機はもちろんのこと、5時間ほど仁川空港で暇をつぶさなければならなかったのは、思いのほか大変だった。しかも、現地に到着したのは日本時間で午前1時30分(現地時間午後11時30分)と遅かった。


 その夜、初日の興奮から、ゲストハウスのアンコールロッジで夜中まで起きて盛り上がっていた僕たちに丸井先生の雷が落ちた。「こんな時間まで何しているの?これは修学旅行じゃないのよ!」といわれた時、僕たちはもうこの講座を楽しむことができないと自分たちの軽率な行動を後悔した。しかし、丸井先生は次の日からも僕たちに今までと同じように接してくださった。この感謝の気持ちを講座中僕たちは忘れはしなかった。
 

 現地第1日目は、丸井先生を初め参加者の方々と顔合わせをし、その後プノン・バケンに向かった。急勾配の坂だったので、汗だくになりながら登った。丘にあるプノン・バケンの石造遺跡に登ると、快晴の空の下、周辺の遺跡群が一望できた。その風景は、日常生活では味わえない、壮大なパノラマだった。頂上で景色を眺めたり、写真を撮ったりした後、西バライという大きな湖へ移動した。ここでは、満喫できるほどの時間はなく、昼食のためにロッジに戻った。


 午後からは、この講座で一番の見所であるアンコール・ワットへ向かった。今までも写真で何度か見たことがあったが、やはり本物のスケールは想像をはるかに超えていた。建物の大きさ、彫刻の繊細さなどすべてに驚かされた。さらに、西参道など実際に修復に当たられた方々から直接説明をお聞きできたのも感動的で、この講座を受けてよかったと思った。この参道の片側(南側)はフランスがコンクリートを使って修復をしたのだが、上智大学チームは造営された当時のやり方で接着剤を使わず、隙間なく石を積んで修復されたとのことだった。具体的な説明を聞き、赤褐色の石積みの素晴らしい光景に鳥肌が立つ思いがした。

 2日目は、アンコール遺跡のもう一つの代表格であるアンコール・トムを訪れた。まず、南大門にある四面仏の瞑想しているかのような表情が忘れられない。死者の門やバイヨン寺院などへ移動する際は、電気自動車が使われていて、環境にも配慮されていた。
その日の午後、アプサラ森林局を訪問し、アンコール遺跡の森林保護について説明を受けた。さらに、苗木センターを見学した後、実際に植林の体験をさせて頂いた。植林の準備をしてくださったモニーさんがとても気さくな方で、カンボジアの人々の温かさが伝わった。

 また、次いで訪れたスパイスガーデンはまだ建築中であったが、ここで採れた食材を使ったレストランやショップなど将来の計画をお聞きし、早く実現して欲しいと思った。この日はカンボジアの伝統的踊りであるアプサラダンスを鑑賞しながらの夕食だった。とても幻想的に踊りで、徐々にその世界へ引き込まれていく気がした。

 
 この講座もあっという間に中盤へとさしかかり、3日目は遺跡見学だけではなく、とても楽しみにしていたバンテアイ・クディでの発掘体験の日となった。この作業は土を掘って運び出す作業を何度も繰り返すのだが、30分もたたないうちに僕は汗だくになってしまった。とても重労働で、到底僕たちの手に負えるものではなかった。しかし、石ころであっても、何かが土の中から出てきた時のドキドキ感は忘れられない。その後タ・プロームへと移動した。ここでは、樹齢百年ほどの大きな木が遺跡を覆うように生えていて、木の中に遺跡がある風景は衝撃的だった。木の根が遺跡を支えているので整備するのも困難だそうだ。この時デジカメを忘れてしまい写真を撮ることができなかったのが心残りだ。


 この日の午後はシハヌーク・イオン博物館へ行った。前日に発掘体験したバンテアイ・クディから大量に発掘された仏像が展示してあり、一体一体異なる表情豊かな仏像をじっくりと目に焼き付けた。また、日本のイオンが資金提供して作られた博物館ということもあり、日本語の解説が書かれてあり、大変わかりやすかった。拓本の体験ができたのもいい思い出となった。
 

 4日目は、タニの窯跡とその博物館に行った。電気も通っていない田舎にある博物館だったので、現地の子どもたちが僕たちを物珍しそうに近づいてきた。その子たちと、写真を撮ったり、指さし会話帳を片手にカタコトのクメール語で会話をしたりもした。彼らはとても生活水準が高いとはいえない。しかし、目をキラキラ輝かせ満面の笑顔で僕らに接してくれた。自分が不平不満ばかり言っていることにきづき、恥ずかしくなった。


 その一方で、生活が貧しく観光客にお土産などを売って生活している子どもたちがどこの遺跡にも大勢いたのが、悲しく感じられた。「お兄さん、お兄さん、三個で一ドル!」と言ってそばに寄ってくる子どもたちは、小学校低学年やそれより幼い子供だった。今まで韓国にしか海外旅行をしたことがなかった僕にとって、一番ショッキングなことだった。その子のために物を買うのか?その子が可哀想だから買うのか?と自問自答した。僕たち観光客が子どもたちから物を買っているままでは、彼らは学校へ行けない。この悪い連鎖は止まらないのではないかという考えも生まれ、心中葛藤しながら彼らと接していた。


 その後、バンテアイ・スレイに移動した。ここは、いわゆる「東洋のモナリザ」があることで有名な遺跡だが、この他にも目を奪われるほど美しい彫刻がたくさんあった。この、遺跡はそんなに大きくはないが、とても繊細で、池に映る姿が美しかった。


 この日は昼食後少し休んだあと、伝統的な影絵であるスバエク・トムのワークショップに向かった。実際に楽器を演奏したり、演技の一部分を教えてもらったりと盛りだくさんの内容で、引率の吉田先生をはじめ、みんなが心から楽しんでいた。実演途中でスコールに見舞われたが、現地の方のすばらしい対応で、ほとんど濡れずに移動のバスへ乗り移ることができた。夕食はこの日に行った遺跡と同じ名前のバンテアイ・スレイレストランでの伝統料理だったが、みんな箸が進まずフライドポテトが唯一の助け船だった。フライドポテトがこんなに美味しかったことはない。


 時間はあっという間に過ぎてしまい、緑陰プログラムの最終日となった。この日は地元の小学生の遺跡見学会を手伝う役目を負って2度目のアンコール・ワット訪問となった。一緒に行った子供たちは、アンコール・ワットへ行くのもバスに乗るのも初めての子が多く、バスの中で色々な歌を歌ってくれた。また、回廊内に入ると大学生の説明を真剣な表情で聞く子供やあまりのすごさに開いた口がふさがらない子供たちも大勢いた。すばらしいアンコール遺跡を後世に残していくには、実際に遺跡を見てそのすばらしさを実感することが大切なのだ。この活動がさらに活発になることを祈った。その後、閉校式が行われ、緑陰講座は無事終了した。この日の夜は、講座参加者や小学生見学会の大学生のために人材センターの人たちがパーティーを準備して下さり、大変盛り上がった。また、翌日は帰りの飛行機が深夜なので、遺跡をもう一度見たりお土産を買ったりと、各々が残りの時間を楽しんだ。


 緑陰講座に参加する以前のカンボジアのイメージは、「アンコール・ワット」・「貧しい国」という程度のものしかなかった。そんな僕が、素晴らしい遺跡や暖かく情熱に満ちた現地の人々、優しく接してくれた大学生の先輩達と出会えるなんて、参加する前は想像もできないことだった。さらに、国際的、社会的な問題についても気づき、考える機会となった。将来の進路を考えている最中でもあるので、よい経験でよいきっかけとなった。


 最後に、この素晴らしい緑陰講座を企画してくださった丸井先生をはじめとして、ご教示いただいたすべての先生方に感謝の気持ちを伝えます。ありがとうございました。

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~17時半
    (※ビザの申請・発行は12時半まで)

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
問い合わせフォーム