半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第1期】カンボジアを訪れて

 7月27日の午前10時。クメール文化の誇りであるアンコールワット、国土の中央をメコン川が南北に流れ自然あふれるカンボジアへの期待を胸に、私は14日間の遊学へと旅立ちました。「カンボジアの今を肌で感じて目で確かめ、より多くの人に魅力を伝えていきたい」私のなかに、強い思いが漲っていました。このレポートでは、特に印象に残った場所や出来事を書いていきたいと思います。

<ツールスレン虐殺記念館>
 極端な恐怖政治によって多くの命が奪われ、刑務所として利用されていたこの場所では、多くの人が亡くなりました。実際に虐殺が行われたとされる部屋に、一歩足を踏み入れた時に感じた空気と写真のシャッターを切ることができなかった感覚は、今でも忘れることができません。

 ポル・ポト時代の虐殺や内戦の影響で若年者人口の比率が高く、国民の8割以上が農村人口とされるカンボジアにおいて、虐殺の記憶を語り継ぐことはとても重要な意義をもっています。カンボジアの歴史において忘れることのできない虐殺の記憶は、「裁判」という形となって現在でも人々に語りかけています。私がカンボジアに滞在している時にも、裁判の動向などが地元の新聞で取り上げられており、関心の高さがうかがえました。しかしながら、日本で裁判の動向を報じられることはごくわずかです。日本は、特別法廷予算の最大拠出国であるということも含めて、もう少し日本国民の関心が向いてもよいのではないかと思いました。かつて日本は、カンボジア紛争時に日本外交の新しい分野としてアジアにおける地域紛争処理の本格的協力を行ってきました。当時のカンボジア紛争は、朝鮮半島に次ぐ不安定要因として注目され、日本は調停役として主要関係諸国との連絡・協力をとってきました。これらのことから、今日における日本の外交政策への課題と展望を学ぶことができるのではないでしょうか。

<カンボジア大学>
 ここでは、授業見学や生徒たちとの交流を行いました。「若い世代として、この国を支えていけるよう勉強に励みたい」大学で学ぶことが、いかに素晴らしく貴重な機会であるかを話してくれた生徒の眼差しがとても印象的でした。また、地雷や貧困といったイメージから脱却し、活気溢れるカンボジアとして成長していこうと若い世代が勉学に励む姿には、同世代として考えさせられるものがありました。

 現在、カンボジア国内には9つの国立大学があります。国を担う次世代リーダーの育成が急務であるカンボジアでは、1997年以降の私立大学設置が認められて以来、新しい大学が設置されています。その一方で、地方においての義務教育を全うする生徒は少ないとのことです。親の理解が得られないことや貧困などの理由から、多くの若者が学ぶ機会を失っています。そのため、義務教育においては質の向上が強く求められており、教育の重要性にたいする国民の理解が必要不可欠であることを感じました。

sasano.jpg<未来の光孤児院>
 未来の光孤児院では、14歳から16歳で孤児院に連れてこられる子供たちが多いとのことです。そのなかには、兄弟や姉妹も多いことが印象的でした。孤児院では、18歳で自立して社会に出ていくための勉強やスキルを身につけていきます。私が日本から持ってきたチェキカメラで、子供たちの写真を撮りプレゼントすると子供たちは日本語で「Sister、ありがとう」と微笑む顔がとても印象的でした。また、渡航前に家で集めていたウルトラマンの人形を渡すと、大事そうにポケットにしまいこんでいました。帰り際には、以前子供たちが撮り、持っていた写真を「また訪ねて来てね」と渡してくれ、再訪を心に誓いました。

<最後に>
 14日間の滞在中、カンボジア大学や未来の光孤児院を訪れ若者の声を聞くことができました。自分の夢や国の将来、日本との関係をいきいきと語る彼らの目は眩しいほどに輝いており、ガイドブックには載っていないカンボジアの姿を見ることができたように思います。また、アンコールワットやベンメリア遺跡ではカンボジアが持つ歴史の奥深さと素晴らしさを感じました。

 半田スカラシップ短期留学生として自分の目と耳でカンボジアの「今」を感じることができたことは、両国の関係を見つめなおすと共にこれからどうあるべきかを知る機会となりました。平和と経済協力を通じてパートナーシップを築いてきた両国にとって、若者同士の意見交換を通じた交流は、とても重要なことだと思います。今後、カンボジアと日本が更なる協力関係の下、相互理解を深めることができるよう微力ながらも尽力していきたいと考えています。

 最後になりましたが、今回の派遣にあたってご支援いただいた関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。


立命館アジア太平洋大学3回生 佐々野 桜

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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