半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第1期】真実の歴史を伝えられる存在に

inazumi.jpg カンボジア王国。日本から遠く離れ、普段普通に生活していれば直接関わる機会のない国、であるはずだった。高校生の時、テレビや本を通し、地球上で起きている現実を知り、強いショックを受けた。大学生となり、貧困の仕組みについて学ぶようになると、私たちひとりひとりが世界の貧困と直接関わっていているというまぎれもない真実を知った。それは、世界の現実を知ったとき以上の何倍ものショックであった。世界はつながっており、決して、私たちと関係のない遠い国で起こっていることではないということ。何不自由ない生活を過ごせているのは、途上国の存在があっての上で成り立っていることを知り、信じられなかった。明らかに不平等でおかしい構造が成り立っている現実、同じ時代に生きる者として、一大学生として何かできることはないのかと考えていた。

 この夏、私は「平和」という言葉にひたすら向き合うこととなった。私の通っている沖縄国際大学の目と鼻の先には普天間基地があり、普天間基地との距離は、わずか道路一本分。授業を受けている私たち大学生の教室の上空を戦闘機や米軍ヘリが行き交う。2004年には、普天間基地に着陸するはずの米軍ヘリが大学内に墜落し、爆発炎上した。日々、感じている不安は現実のものとなり、最近では2009年、糸満市の水道管敷設工事で不発弾が爆発。重傷者を出したほか、老人福祉施設の窓ガラスが100枚以上も割れた。沖縄に基地や不発弾が存在する限り、本当の終戦は訪れないのだと私は考える。

 今回、自分の足でカンボジアの地を踏み、様々な人と話す中でカンボジアの空気を肌で感じた。頭では知っていたが、カンボジアでは驚きの連続。自分の当たり前が当たり前ではない日本とはまるで別世界。ここが異常なのか。日本が特別過ぎるのか。その中でも一番戸惑ったのははじめて物乞いに出くわした時である。目を合わせることができなかった。自分でお金を稼ぎ、道を切り開かなければならない。お金をあげることは何の解決にもならないと自分自身の中で理解しているはずなのに、悲しい表情で裸足の子供に服を引っ張ってねだられると、非常につらい。現状を変えることのできない自分の無力さを感じ、私にできることは、「この現状を変えたい」という気持ちを持ち続けることだと感じた。また、カンボジアの人々は、ポルポト時代の傷跡、貧困や格差が解決しない悪循環の社会の中、非常に明るく、自分たちのペースでのんびりと毎日を過ごしている姿を見て、今後カンボジアが発展していく中でも、この良さは失ってほしくないと感じる。今回の遊学中、ポルポト政権により自分の両親が殺された現地のガイドさんとも知り合うことができた。所々で自分の事前の勉強不足を痛感し、より深くカンボジアという国を調べ、知り、発信できるようになりたいと思った。

 この世界で起きている事実や沖縄戦、そしてカンボジアの実情。歴史は同じ過ちを繰り返し、21世紀の現在でも争いが絶えることはない。自分の生まれ育った沖縄のおじい、おばぁから戦争体験を聞き、カンボジアの悲しい歴史を直接肌で感じた。そしてその中にひとつだけ変わらないものがあった。それは弱い者が苦しむという事実。沖縄戦もカンボジアの内戦も住民が多く巻き込まれ、傷つき、残ったのは大きな悲しみとこれからも苦しめられ続ける爆弾だけだった。

 カンボジアに行き出会ったキラキラの笑顔。それとは対照的に、目に焼き付いて消えないトゥールスレン博物館で見た収容者の写真。悲しく冷たい目をしていて、一人ひとりの気持ちを想像していると、心が痛くなった。しかしカンボジアでは、ポルポト政権下の悲惨な時代を知らない若者が増えてきている。沖縄でも、戦争体験者の減少による記憶の風化が課題となっており、過去の真実を伝えていく工夫が必要であると強く感じる。 大学で様々な学問を学び、さらに社会に関わるようになり、社会の仕組みや世界の仕組みに矛盾が多いことを感じる。しかし、その矛盾を変えていくのは私たち若い世代であり、ひとりひとりの一歩は小さいけれど、私達は確かに社会に影響を与えることができる一員であると思う。悲劇が繰り返されないために、笑顔が奪われないように、私たち沖縄の若い世代もカンボジアの若い世代も、積極的に学び発信していくことが改めて重要だと感じた。現場に足を運び、声を聞くことで、行動に移さなければと心に火が付いた。カンボジアと沖縄の懸け橋になるべく、祈るだけでなく、想うだけでなく、語るだけでなく、知ったら動く。

 今、高校生に向けて沖縄戦の真実を伝える授業を大学生で計画している。その際、カンボジアの歴史についても話そうと思う。まず私が今できることをできる限りやろう。カンボジアの輝くキラキラな笑顔が永遠に続くように。

 最後に、このような貴重な経験をさせていただいた半田晴久名誉領事をはじめとする在福岡カンボジア王国名誉領事館の皆様、西日本新聞社の皆様には心より感謝申し上げます。


沖縄国際大学 稲住 光祐

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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