- 開館日 月曜日~金曜日
- 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
- 開館時間 9時半~12時半
年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。
(はじめに)
私は、他の遊学生とは少し違う視点からカンボジアを経験したかもしれない。その理由として、以前経験した1年間の沖縄留学が挙げられる。日系アメリカ人である私は、両親の故郷、沖縄で留学した際、沖縄の事を初めて色々学び、戦争の恐ろしさ、平和の尊さを実感した。この経験から私自身が抱いている夢は、世界平和である。世界平和を成し遂げるためには、まず、国同士の理解が必要であると考える。そのためには、人間同士の理解が必要であり、この達成のためには、一人一人の努力が必要である。「仲の良い人や国とは喧嘩はしたくない」という単純な考え方を持っている私にとって、世界平和の夢を叶えるには、まず、自ら様々な国に足を運んで友達を作る姿勢が重要であると強く信じている。その思いを持ちながら、私はカンボジアで4月26日から5月6日までの11日間、遊び、学んだ。
(アドベンチャー)
滞在中、カンボジア大学、シアヌーク病院、ワールドメイト光の孤児院の訪問とホームステイを行った。印象深かったのは、カンボジア人の笑顔、温かい心であった。カンボジアの大学の授業に参加させてもらった時、学生の責任感の強さには特に感銘を受けた。彼らは国、家族、次世代のために一生懸命なのだということがすぐに伝った。バンタットという25歳のカンボジア人男性は、「私の子ども達、そして孫たちにもっと良い生活を送らせるために、私は今頑張らないといけない」と熱く語っていた。それを聞いて、私の祖母と祖父も戦後きっと同じ事を思い、毎日彼のように頑張っていたのだろうと思った。そして、私が今この世にいられる理由を思い返した途端、先祖に対する感謝の気持ちが心に溢れていた。現在発展しつつあるカンボジアは、授業で学んだ戦後の沖縄、日本の状況を思い浮かべると共に、先進国であるアメリカ、日本は今後カンボジアから学べる事が大いにあるという事に気づかされた。
カンボジアでは未だ様々な社会問題が残っており、これらに目を逸らす事はもちろんできない。事実現地では、生きるため、お金のために、ぼろきれを纏い、裸足のまま、空き缶を集める子供達もいた。しかし、私の想像とは裏腹に、カンボジアの田舎でホームステイをしてみると、素朴で幸せな生活感を体験できた。カンボジアにしかない豊かな新鮮さがとても魅力的だった。それは、物、お金を中心にした社会ではなく、希望、夢が中心になっているからだと現地の人と交流して実感した。お金があるから幸せになるのではないのだ、という気持ちを、輝いているカンボジア人たちを見て学んだ。
実は、滞在中、思いがけない事に、結婚式にも招待された。カンボジアの結婚式は物凄く派手で、最初は誰が新郎新婦で誰がお客さんかを区別することができない程であった。そこでは、現地の言葉(クメール語)が一言も分からなかった私に対し、あるカンボジア人のおばさんが話しかけてきた。そして、おばさんは、私の手をいきなり掴み、自分が座っていたテーブルまで案内し、家族を紹介してくれた。お互い言葉が全然理解出来なかったが、身振り手振りと笑顔だけでみんなと何時間も楽しむことができた。コミュニケーションは言語だけではなく、意思疎通を試みようとするエネルギーと努力こそが、人と人を結ぶツールだと思った。カンボジアでさまざまな人に出会い、話を聞いて、自分の人生を、アメリカと日本とは完全に違う立場から見る事ができた。
光の孤児院では、「孤児院」という負のイメージからは想像し難い、不思議な小さいユートピアにいるように感じた。物欲がない子供達一人一人の笑顔からは、世間が抱くマイナスイメージとはほど遠い、幸せな時を過ごしていることを感じ取ることが出来た。他の人、友達に対し、自分の愛情を素直に、偏見を持たず伝える環境があって子ども達は本当にラッキーだなと思った。
私はボランティアを通して、現地の人々に異文化を学んでもらうつもりであったが、逆にカンボジアの人たちから多くを学んだ。そして、私も他の人のためにもっと頑張らないといけないと強く思った。
(感 想)
次世代のリーダー、世界のリーダーとは、広く世界を知る人材であり、その人材育成の為には、先進国、途上国に住む多くの分野の学生を交流させ、自分の文化を異国に伝え、異文化を自国に伝える柔軟な発想を植え付ける事が大切であると私は考える。そして、その柔軟な考えは、世界平和に確実に繋がっていくと信じている。
国は人で成り立っている。国の集まりである世界もまた人と人で成り立っている。国が違えば文化も違う上に、そこに住む人たちは、自分とは異なった考えを持っているかもしれない。極端な考えを排除し、言語、国籍、性別、年齢の壁を越えたポジティブな環境を作り、人生のバランスを保つことは大事である。現状に満足することは進歩を生み出さない。カンボジアでの遊学は、もっとハングリーな気持ちで物事に取り組む姿勢を思い出させてくれた。生きている実感、人間でいることの充実感を味わえる遊学であった。
最後に、素晴らしい機会を与えて頂いた、在福岡カンボジア王国名誉領事館、西日本新聞社、現地の方々に感謝を申し上げます。
了
岡垣町国際交流員 真喜志 恵