半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第5期】「人材から人財へのシフト」を実感

この遊学の旅はバンコク国際空港の待合でカンボジア人の親子連れの出会いで始まりました。見ず知らずの私を自宅に歓待していただき、宿泊のホテルまで送って頂けました。

 私はこの2週間の遊学の旅を通して3つの施設を訪れ、そのスタートとしてプノンペン郊外に位置する「未来の光孤児院、通称FLOW」を訪問しました。敷地は広く、施設の子供たちが自主的に掃除をしているとのこと。学校教育に加え英語、中国語、日本語などの外国語の授業やIT関連のクラス、更には伝統舞踊や音楽の教室を提供しています。特に英語教育に対して力を入れており、英語はカンボジアで良い職業と安定した収益を得るために必要不可欠なスキルです。高校卒業後、孤児院では居住費以外は自己負担であり彼らはプノンペンやシェムリアップにおいて職を探し、貯蓄によって大学や職業訓練所で勉強をしています。また就職率は非常に高いとのことです。その理由として彼らの底知れぬ勉学への欲求によって得た言語能力ではないかと考えます。施設での滞在中に図書館で彼らと絵を描いたり、本を読んでいた私に子供たちが英語の本を指さし、何度も“これ何て言うの?”と聞いてきます。常に周りの物事に対して好奇心を持っている彼らだからこそ、短期間でハイレベルな他言語能力を有することが出来るのではないかと考えます。彼らが近い将来、施設の名前の由来であるように“カンボジアの未来の光”になり、国の更なる発展、問題の解決に大きく貢献することを心から願っています。

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 次に、プノンペンの中心地にある『愛センター』と呼ばれる教育施設に行きました。日本語、英語、クメール語を学ぶ、いわば日本でいう学習塾のようなところです。施設の運営費及び教員の給料は頻繁に受け入れている私のようなボランティアからの寄付や外部組織からの協賛から成り立っており、使われている教材や設備も寄贈されたものが多く教員たちは主に午前、午後、夜、それぞれ二時間ずつを分担して教えており、日給にして数ドルで働いています。施設はいたって簡素で、コンクリート造りのトタン屋根の建物です。施設には現地人が一人常駐しておりトゥクトゥクを営業しているボランティアの送迎の運賃収益の半分が運営費に回され、残りが彼の給料となっているとのこと。

 翌日は愛センターのスタッフと課外教室の為、低所得層の多い地区へ行きました。そこは私が想像していた以上に生活環境が悪く、生ごみ等の廃棄物が散らばり、排水設備もありません。近くのごみの埋め立て地は様々な種類のごみが散在し、子供たちがごみ山から拾ってきた金属ごみを分別していた。授業は主にクメール語による算数の授業で、足し算や引き算を教えていました。ここ数日カンボジアの教育に触れ、感じたことはカンボジアでは日本や他の国のように歴史や理科といった授業の機会はほとんどなく教えられる教師の数も少ないこと。高額な教科書の問題や子供たちの基礎知識の問題もあると思われました。識字率が低く、職業機会が乏しいカンボジアでは言語教育が優先されその他の基礎教養は教えられていないと思われました。

megumi_02.jpg  翌週、カンボジア大学を訪問しました。現地学生と共に基礎教科と専門教科を受講しました。両講義とも一貫して英語で行われ米国の大学と同じスタイルでした。このような高度な学習環境であっても学生たちは理解し、教授が投げかける質問に対して的確な回答を積極的にしているなど、自らの能力に対しての自信が伺えました。反面、授業スタイルは教授が言ったことを学生が書き取るといった所謂“一方通行型”の教育もありました。その理由として学生の語彙力や知識量の問題があると教授が仰っていました。そのため重要語句ごとに説明し授業を行い自己の考えや主張を話し合いの中で反映させ、議論を発展させるという授業となっていました。上記の教育方法からこれからからのグローバル社会において必要不可欠な言語能力は勿論の事、自らの考え等をアウトプットする能力を育成する環境、それらを備えた学生が多いように感じられました。

megumi_03.jpg  今回の複数の教育施設の訪問を通して間違いなく言えることは、以前ならば“人材”として低賃金で働いていた労働人口が、これからの世界で活躍することのできる“人財”へシフトしてきているという事と、それらの人材を育成する教育機関が多く出来ており、奨学金や低額な授業料により高等教育を受ける機会が増えてきていることです。この先カンボジアへの更なる海外企業の進出や企業の現地化が見込まれる中で、上述のような学生はこれからますます必要とされ、これがきっかけで少しでも生活基準、更には国の発展につながることを心から願っています。私もこれから社会の一員を担っていくわけですが、何らかの形で今回のような素晴らしい経験や出会いを与えてくれたこの国と関わり、良い変化をもたらす一助と成っていきたいと考えています。最後にこのような大きな気付きを得るきっかけを与えてくださった在福岡カンボジア王国名誉領事館とカンボジアの友人たちに感謝を表したいと思います。


立命館アジア太平洋大学 本多駿介

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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