半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第5期】「歯学の原点を探る」

 今回の遊学は「歯学の原点を探る」というテーマのもと、現地のカンボジア人経営の歯科医院、日本人経営の歯科医院、またシアヌーク病院、未来の光孤児院、カンボジア大学を訪問させて頂いた。将来、発展途上国と言われる地域で歯科医師として働きたいと思っているにも関わらず、今まで訪れた事のある国は全て先進国という矛盾を抱えていた所、この半田スカラシップに出会いこのような素晴らしい機会を得ることができた。ここで書き表せられない程の経験をした。

harada_01.jpg  初めの二日間はシェムリアップに滞在しアンコールワットを巡る一方、ガイドさんにお願いして現地の病院に連れて行ってもらった。私からすると良くない衛生環境なのだが、保険45%負担ということでお金持ちが来院する所だそうだ。また、ガイドさんは日本人経営の孤児院で育ったらしく流暢な日本語が印象的だった。しかし遺跡の説明中、急に「僕は死にたい」という。理由を聞くと政治体制が原因だという。「先週の選挙でも与党により結果に工作が加わり、また政治のトップは全てベトナム系で占められ、汚職が激しい」という。しかし、人民によるデモは内戦勃発の恐怖により起こり得ないとのことだ。彼の意見を鵜呑みにするのは間違いかも知れないが、日本で会うお金持ちのカンボジア人とは正反対の立場と思われる一般人民から意見を聞けたのは良かった。

harada_02.jpg  シェムリアップからプノンペンへはバスで移動した。欧米人の子供がipadを用いてゲームをする横で 、外には物乞いの子供がいて、この貧富の差は何なのかと考え続けた7時間だった。また二日目に訪れた現地の歯科医院は、ハーバードでインプラントを学んだという有名な女性の歯科医師だった。「自分のところに来る患者は幸せだ」という姿が印象的で、自分の技術に対する誇りを感じる事ができた。その確固たる技術は「卒業以前から実際に患者相手に何度も練習したから、先進国の歯学生よりも技術がある」そうだ。それはつまり、貧しい人に無料で実験台になってもらうということであり、「実地訓練」とは日本では考えられない事である。また、ご厚意でその歯科医師が卒業した大学にも行った。その歯科医師の姪っ子が私と同じ歯学部三年生ということで彼女に案内してもらった。やはり同じ学年ということで話が弾み、お互いの将来や歯科医療の問題点などを知ることが出来た。大学はフランス人経営の国立大学で、授業は主にフランス語で行われているとのことであった。

harada_03.jpg  プノンペンでは未来の光孤児院、JICAカンボジアデスク、日本人経営の森歯科医院を訪問した。孤児院ではハワイから来たという家族に会ったが、子供二人は13年前に養子になったカンボジア人で、今回初めて彼らの故郷を探しに来たとの事だった。二人ともクメール語は話せず、ネイティブのアメリカ人のような格好、立ち振舞いであったため、言われるまで全く気がつかなかった。また今現在、カンボジア政府は養子を海外に出すことを基本的に認めていないというのも衝撃であった。未来の光孤児院の子供達は町で見られる子供よりも裕福な生活、十分な教育を受けているように見えた。またJICA事務所では大まかにJICAや日本がどういう支援を行っているのかが分かる非常に良い機会であった。

 日本人経営の歯科医院では、主に現地の日本人、欧米人を対象に治療を行っているらしいのだが、それだけではなく、日本からもカンボジア観光のついでに来院する人も多いそうだ。カンボジア内では初の日本人向け医療ツーリズムとの事であった。元々はカンボジア人を対象に治療していたが、歯学に関する知識が乏しく、保存治療に対して理解を得らなかったため、患者の対象を日本人や欧米人に変更したという。やはり経営をするとなると、カンボジア人スタッフとの考え方の不一致など苦労する点も多いとのことだった。これは海外で働けば容易に想像できることだろうが、特に世界的に見て勤勉と言われる日本人にとってその差が大きく映るのかもしれない。

 最終日にはシアヌーク病院とカンボジア大学を訪問した。シアヌーク病院は完全無料で、地元住民に根差した医療をしている所だ。しかし、日本で医療を学ぶ私からすると衛生環境に大きな差があるのは明らかであった。一方、カンボジア大学では授業に参加させて頂き、短い時間であったにも関わらず仲良くなる事ができた。クラスの中に、僧侶の男の子がいて、僧侶になったプロセスを聞いた。すると家が貧しく、教育を受ける事が出来ず、それを解消しようと思い僧侶になったそうだ。僧侶になると、国からの助成金が出るそうだ。女性に近寄る事、触れる事はもちろん、結婚する事も禁じられている。そのため集合写真に写る事もできないそうだ。このように聞かなければ分からない事、現地に行かなければ分からない事の多さを実感した。

harada_04.jpg 今回は初めて一人で行く海外で、正直不安も多かったが沢山のカンボジア人、日本人に支えられて有意義な時間を持つ事ができた。将来、ここカンボジアで働く機会があれば、ただ与えるだけの支援ではなく、将来諸外国からの支援に頼らず自立した国となれるような発展に貢献できる人材になりたい。カンボジアはもちろん、未だ発展途上国といわれる国には、裕福とは言えない生活があるが、多くの国際援助を生かして、頼るのみではなく、1日も早く自立した国になれることを切に願っている。大学3年という非常にバランスのいい時期にこうして自分の将来について考える機会を頂いた事に感謝しています。


九州大学歯学部三年 原田有理子

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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