半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第6期】カンボジアの医療施設、孤児院を訪問して感じたこと

私の遊学のテーマはカンボジアの風土病や医療設備、医療制度の実状を学ぶというもので、プノンペンのシアヌーク病院とバッタンバンの救急病院を訪ねた。どちらの病院も日本を始め、先進国からの寄付や人的支援によって運営され、治療を無料で受けることができる。シアヌーク病院では施設のほとんどを案内していただき、医師からお話しを伺うことができた。その中でも無料診療のため国内各地から集まる多くの患者、医療設備とスタッフの不足が強く印象に残っている。感染症や妊婦などで病棟は区別されていたが、特にHIVや結核などが多いカンボジアにおいて、感染症の隔離病棟は陰圧装置や扉もわずか一枚で、細菌ウイルス蔓延の防止の効果はどれほどあるのか疑問に思った。外国人医師の話ではカンボジア人の医療従事者の教育に力を入れており、医師も育ってきたが、まだまだ発展段階で教育者である外国人医師も足りないと伺った。

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 バッタンバンの救急病院は交通事故などによる外傷患者を主に受け入れる病院で、日々数多くの手術を行っており、特に祝日には飲酒運転による事故で患者が増えるとのことだった。入院病棟は法律により男女で病室が区別されていたが、病室によっては感染症患者と他の患者が同じ病室におり、物理的に管理が難しい印象を受けた。話を聞くと、新病棟を建設中で新しく個室も作る予定とのことだった。この二つの病院施設を訪問し、医師から話を聞いて感じたことは、①人々の健康に対する意識の低さに伴う塩分や糖分の高い食事からの疾患、②高額な受診料の王立病院を受診できない人々のための保険制度確立の重要性などが印象に残った。今回カンボジアを遊学させていただいて、医療関係者始め、多くの人々からお話しを伺うことができ、ほんの断片ながらもカンボジア医療について考えることができ、将来の医師として新たな視点を持てたと思う。

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 医療施設の他に、プノンペンではカンボジア大学と未来の光孤児院、バッタンバンではノリア孤児院を訪問した。特に印象に残っているのは、バッタンバンのノリア孤児院(Hope Of Children)である。ここには、福岡出身である岩田亮子さんが子供達と一緒に暮らしながら支援を続けていらっしゃった。今年で6年目だそうだ。私は同じ滞在日となった、日本人男性が企画した石窯作りに3日間参加させていただいた。大勢の子供達にピザやパンなどを作るためのもので、大掛かりなものだった。何も材料がないところから全部手作り。みなさんの発想力と技術にはとても驚かされた。子供達も自ら意欲的に材料運びやセメント成形などに参加し、孤児院の方々みんなで完成目前までわずか3日で作成することができた。完成までにはたびたび障害もあったが、みなさんの柔軟な発想や手先の器用さで解決していった。このことを岩田さんに話すと「豊かさ」の話になった。日本を含む最近の先進国の生活は利便性が高く、モノが溢れた消費社会であるが、それが果たして本当の豊かさなのだろうかということだ。もちろん先進国の生活は確かに便利であるが、その利便性ゆえの想像力低下や対人関係の減少が日本の教育や社会でも大きな問題となっている。しかし、そうでない場合は人々と知恵を出し合うことや協力が生まれる。そのような密な関わりをカンボジアではいくつも感じることができた。こちらの孤児院を最初に訪問したとき、毎日のように世界から私のような訪問者がいるにもかかわらず、みなさん笑顔で歓迎してくれた。3日間、とてもエネルギッシュな子供達と寝食を共にし、サッカーや鬼ごっこ、ダンスなどヘトヘトになるまで楽しんだが、さらに、私のことを常に配慮してくれ、他の子供達をお互い気遣っている姿などを見て、心の温かさを感じた。岩田さんは子供達の生活はもちろん、雇用面や自家農業など含め様々なことに奮闘されていて、その探究心と意欲に強く胸を打たれた。そんなお忙しい中、子供達にはいつも心優しく、愛されている様子が伝わってきて、周りの人が自然と笑顔になる素敵な方だなと感じた。帰国してからも、福岡での岩田さんの報告会に2度も参加させていただき、そこで様々な分野で活躍されている方々とお話することができ、とても貴重な時間を過ごすことができた。

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 3週間の遊学生としてのカンボジア滞在はとても充実したかけがえないものとなった。カンボジアには世界中から多くのNGO団体やボランティア活動をする方がおり、正直驚いた。その一方、訪問した医療施設や大学には日本からの寄付や支援はあったのだが、現地スタッフとして日本人がいなかったのには寂しさを感じた。途上国支援において、何かをしてあげるという考えではなく、現地の人が何を求めているかを理解し、それに対してどう寄り添って協力できるのかが重要だと思った。その点で自分はこれから何ができるかじっくり考えていきたい。そしてやはりこの旅を通じて、カンボジアの方々はじめ、日本の方々との素敵な出会いが私にはとても大きなものだと感じた。この場をお借りして、素晴らしい機会を提供してくださった在福岡カンボジア王国名誉領事館の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。


大分大学医学部 坂井友弥

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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