半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第10期】カンボジアの障害者・児の現状

私は9月下旬、10日間にわたり、首都プノンペン特別市、アンコールワットのあるシェムリアップ市に滞在した。私の遊学目的は、「カンボジアの特別支援教育の現状を学ぶ」ことであった。しかしながら、私の滞在期間はカンボジア国の特別支援教育関連施設の夏季休業期間と重なっていたため、それらの見学は叶わなかった。その代わりに障害者福祉等に関連する施設を訪問し、カンボジアの障害児・者の現状を学んだ。
今回の滞在では、プノンペン大学日本人教師、シェムリアップで10年以上に渡り教育支援を行っている日本人女性から全面的な協力を頂戴し、計11カ所の施設訪問をすることができた。ここでは特に印象に残った3つの施設を紹介したい

3-000.png① プノンペン自立生活センター(ppcil)
このセンターは障害者の自立を目指し、障害のある当事者が主となって運営している施設である。所長のSamith氏は小さい頃にポリオに罹患し、車椅子を使い生活している。 彼は日本での滞在経験があり、日本で学んだ障害者の「自立」を母国カンボジアで実現するため、帰国後、この施設を開いた。現在は日本からの支援を受け、差別解消のためのワークショップを開催、JICAからの委託事業を担う等、障害者の自立の推進に向けて精力的に活動している。基本的にカンボジアの道路は段差が多く、道も凸凹というバリアだらけであり、バリアフリーという概念はないに等しい。しかし、自分の力だけで通勤できないかと考えたSamith氏はバイクを手だけで運転できるよう改造したとのこと。颯爽と運転する彼の姿に思わず笑ってしまったが、この逞しさと工夫力は日本でみることは少ないのではないだろうか。

② ナショナル・ボレイ(National Borey for Infant and Child)
ここは社会福祉省の研究所に隣接する孤児院兼障害者施設である。現在は4か月から35歳までの142人が在籍し、72人のスタッフが勤務している。他施設では受け入れが難しい障害のある子ども達を受け入れ、その割合は9割以上である。所員からは話せない、歩けない障害児が多くケアが難しいと伝えられた。この施設を見学した時、率直な感想は「ショック」の一言だった。傷口が化膿しハエがたかっても追い払う術もなく暗い天井をじっと見つめる子ども、体に合わない車椅子に座らせられ意味もなく声を上げ続ける子ども、適切なケアが受けられず体が固まってしまった子ども。もちろん職員やボランティアも必死に子どもたちに関わっているが、これもカンボジアの現状の1つなのだと知った。

3-001.png③ シェムリアップのスラム街
シェムリアップの中で最も貧しい地域であり、400世帯規模のスラムである。この地域は雨が降ると家の前の道路に水が溜まり、歩くのが困難になる。ここでは支援の難しさを学んだ。それは日本の支援団体が「ゴミ拾いは月に8ドルしか稼げない。助けて欲しい。」との要請を受け、月に30ドル稼げる仕事を紹介したところ拒否されたそうだ。疑問に思った日本人スタッフが調べたところ、月に80ドル稼ぐことができた。すべての人がそうではないが、時に支援を求める余り自分の現状を偽る人もいる。何が必要なのかをしっかり調査しなければ、本当に支援が必要な人に支援が届かないことを学んだ。一つ嬉しかったことがある。ここに暮らす親のほとんどが教育を受けていないが、現在子どもたちの就学率は95%だそうだ。未来を担う子どもたちが、きっと現状をより良くしてくれるだろうと希望が持てた瞬間だった。

3-002.png この他に、未来ひかり孤児院やカンボジア大学を訪問しカンボジアにはこれからも引き続き日本の支援が必要であることを知った。その他、視覚障害者のアテンドの下暗闇で料理を食べるDID、プノンペン大学、知的障害児の親の会(PACHID)、肢体不自由者へ義肢や義足を作りリハビリを行うEXCEED、North Bridge International School、0歳~5歳前後の子どもが暮らし里親探しの支援をするマザーハウス、学齢期から高校生までが暮らすホープ孤児院、計11カ所の施設を訪問した。シェムリアップではアンコールワットやナイトマーケット、トンレサップ湖の観光、プノンペンでは空港から鉄道に乗り、トゥールスレン虐殺博物館では歴史を学ぶ等、カンボジアを十二分に満喫した。

3-003.png 最後にこの滞在を通して、私が見つけた一つの使命を述べたい。それはカンボジアの現状を日本の障害のある子どもたちに伝えることだ。障害のある子どもにとって、海外に暮らす同じ障害のある仲間の様子を知る機会は決して多くはない。将来教師になった時、子どもたちにカンボジアの障害者が過酷な環境の中、様々な創意工夫と前向きさで自分たちの可能性を切り開いている姿を伝え、肢体不自由の友人が語った「障害を理由に、やりたい事を簡単に諦めない」というメッセージを伝えていきたいと思う。

半田晴久名誉領事をはじめとする領事館、西日本新聞社の皆さま、このような貴重な機会を提供して頂き本当にありがとうございました。そして、滞在中は特にお世話になり、私の人生に大きな影響を与えて下さった2名の先生方に心より感謝申し上げます。


福岡教育大学 特別支援教育教員養成課程2年 飯塚わかな

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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