半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第10期】カンボジアのアイデンティティーを未来へ伝えるために

私は今回、⾃⾝の専⾨領域である「広告」を研究するために、カンボジアに⼀カ⽉間滞 在しました。調査の内容を述べる前にまず、

・「広告」とは何か?
・カンボジアで「広告」を調査する意義とは?
この2 点について説明します。

まず広告と⼀⼝にいっても、媒体で区別した場合には、昔からある新聞や雑誌、テレ ビ、ラジオに加えて、現代では最も影響⼒の⼤きい媒体としてウェブがあります。また、 その性質で分けた場合には、広告(商業的)、宣伝(政治、思想的)、広報(公的)など 様々な⾔い⽅があります。そして⼀般的に広告というと、企業がお⾦を払って商品や⾃社 を売り込む⾏為のことですが、パブリシティといって、マスメディアなどが企業を取り上 げ、実質無償で広告されることも広義には広告の⼀部であると⾔えます。そういった意味 で広告を⼤きくとらえ、「PR(Public Relations);公衆との関係」という場合もあります。 しかし実際にはそれらの⾔葉に明確な定義はなく、論じられる分野でも異なります。私は その中でも、いわゆる商業的な広告ではなく、PR という意味合いにおける広告という領 域を対象に研究を⾏っています。
では、カンボジアで広告を調査する意義とは何か? カンボジアは東南アジア諸国の中 でも発展途上国として位置づけられており、喫緊の課題は教育や医療という分野であるこ とは間違いありません。しかし、私の専⾨領域であるPR という意味合いにおける広告に は、⾃国の⽂化や伝統を守り伝え未来へ伝えていくという⻑いスパンで考えたときに、⾮ 常に重要な意味を持ちます。特にカンボジアは⼤虐殺という歴史の中で多くの知識⼈や⽂ 化⼈らが殺され、⾃国の⽂化や伝統といった⽂脈が⼀度リセットされてしまっています。 だからこそ、今後経済が発展し、⽀援を必要としなくなった時に、カンボジアという国の アイデンティティーを伝える⼿段として、広告という観点からカンボジアを調査すること には意義があると考えています。

カンボジアでは主に、街中でのフィールド調査、そしてアートとデザインの展覧会のス タッフを⾏いました。まずフィールド調査についてですが、その対象として「トゥクトゥ ク」と呼ばれるモビリティを選びました。トゥクトゥクは東南アジア地域ではごく⼀般的 な乗り物であり、観光客だけでなく、現地の⼈たちも⽇常的に⽤いるものです。

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しかし調査を通して、近年ではスマートフォンを使って出発地から⽬的地まで運んでく れる配⾞サービスが台頭してきていることを知りました。インドなどのIT 企業が参⼊し いくつかの似たサービスがありますが、全てに共通して⾔えることは、従来のトゥクトゥ クが交渉による⾮常に曖昧な料⾦体系であったのに対して、GPS と連動することで距離制 による明確な料⾦体系を実現しているということです。そして、それぞれの⾞体はアプリ ごとに⼀⽬で分かるように企業ごとに画⼀化された⾊と形をしています。このトゥクトゥ ク配⾞サービスは、⾸都プノンペンでは今年の4⽉から始まったもののようですが、9⽉ の時点で既に街中で⾒かける半分以上が新しいタイプのトゥクトゥクに置き換わっていま した。私も滞在期間中、便利な移動⼿段として使⽤していました。しかし、街中には従来 の伝統的なトゥクトゥクも未だに多く⾛り、それらは所有者の個性で様々な⾊に彩られて いるということに気付いた時、これが東南アジアの原⾵景であり、今まさにそれが技術の 発展による、より便利な社会への渇望と引き換えに失われようとしているのではないだろ うかと強く感じました。

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2-006.png 今回私は、「カンボジアのアイデンティティーを表現する広告」という意味合いでトゥ クトゥクを捉え、調査を⾏いました。そしてフィールド調査と展⽰会での活動を通して、 ⾃分というカンボジアの外にいる⼈間が感じたことと、バッタンバンの⻘年が制作した作 品の間には、共通の思いがあるのだと改めて実感し、トゥクトゥクがもつ広告としての機 能を再確認できました。苦難の歴史を乗り越え、⽇本とは正反対の超若者社会といわれる カンボジアには、経済的豊かさや便利さを求めながらも、⾃国のアイデンティティーに誇 りをもって、これからの⼤いなる発展に期待したいと思います。 最後にこの場をお借りして、今回の遊学を⽀援してくださった在福岡カンボジア領事館 様及び⻄⽇本新聞社様、展覧会で関わらせて頂いた皆様、そしてカンボジアで出会った全 ての⽅にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

参考URL
展覧会概要;
http://asiadesignart.wixsite.com/ada2018
国営テレビで放送された様⼦;
https://www.youtube.com/watch?v=brSTQ4Zdd6k


九州⼤学⼤学院 統合新領域学府 ユーザー感性学専攻 修⼠1 年 清⽔淳史

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~17時半
    (※ビザの申請・発行は12時半まで)

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
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