半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第11期】カンボジアを変えるIT革命

image1.jpeg 緒言
本プロジェクトはカンボジアの実状に触れて、九州とカンボジア、日本とアジアをつなぐ「若き架け橋」となることを目的として、九州唯一のカンボジア公館である在福岡カンボジア名誉領事館が主催し、西日本新聞社が後援する短期留学制度である。
今回日々の大学院での研究から少し距離をとり、カンボジアという異国の地で新たな発見や出会いを求めて本留学制度に応募した。

目的
本遊学の目的として、
1. 発展途上国であるカンボジアにIT技術の進歩がどれほど浸透しているか
2. それが社会全体にどのような影響を与えているか
以上の二つをメインテーマとして設定しました。私は、大学院卒業後IT通信の企業に就職します。日本では近年、目覚ましいIT技術の進歩によって我々の生活は豊かになっていますが、同様のことが発展途上国でも起きているのか、またそれがどのようなメリット・デメリットをもたらしているのかを知る良い機会だと考えた。

遊学日程
本遊学では、計8日間プノンペンとシェムリアップの二つの都市に滞在し、カンボジア大学、未来の光孤児院、博物館、遺跡などを訪れた。

インターネットの普及
本遊学における一番の驚きがインターネットの圧倒的な普及具合である。私が今回訪れたレストランやスーパー、大学、観光地などには全てWi-Fiが完備されていた。特にレストランのWi-Fi普及率は日本を上回っていると体感した。そのため帰国後にカンボジアのインターネット普及率を調べたところ、普及率は2018年時点で75%ということが分かった1)。この数値は国全体での浸透率であるため、プノンペンやシェムリアップなどの主要都市では90%を超えると推測される。また、日本と違い、SIMフリーのスマートフォンを簡単に購入することができ、同キャリア間の通話が安価であることからSIMカードを二枚持ちし、通話する相手によって使い分けている人もいるほどである。この実態は私が入国以前にイメージしていたカンボジアと大きく異なっていた。また、他にもIT技術の浸透を肌で感じる場面が幾つか見受けられた。

1. トゥクトゥク
image2.jpeg トゥクトゥクは主に東南アジアで用いられている三輪の伝統的な乗り物である。トゥクトゥクは、観光客はもちろんのこと地元の人も多く利用している。このトゥクトゥク業界にもITが浸透していた。画期的な配車アプリの登場である。アメリカの企業が中心となり開発が行われ、スマホで目的地を打つと距離に応じて値段を表示し、近くにいるドライバーに通知が送られルートを確認しながら輸送してもらうといったシステムである2)。このシステムによって従来の問題点であった値段交渉や自分がきちんと最短距離で送られているか分からないといったポイントが解消された。この導入は2017年の出来事であるが、約2年の間で半分以上がこのシステムを導入したトゥクトゥクや小型三輪バイクに置き換わっていた。私は、配車アプリを使って小型のトゥクトゥクと従来のトゥクトゥクの両方に乗車した。昔ながらのトゥクトゥクドライバーは言葉巧みに適正運賃を超える金額を提示してきたが、交渉の末に配車アプリとさほど変わらない金額となった。そのためこの手間やリスクが省けるという点で革新的なアプリであると感じた。このアプリはもちろん素晴らしいが、もう一つ大事なのはこのシステムを利用するにはドライバーと乗客の両方がスマートフォンを持っているという前提が成立している点だ。このシステムが8年ほど前であれば日本人はスマートフォンを持っているがドライバーはおそらく持っておらずこれほどの普及には至らなかったであろう。この経験によって、近年の爆発的なITの進歩が一国のシステムを劇的に変え豊かにしていることを身をもって知ることができた。

2. カンボジア大学
image3.jpeg カンボジア大学では私の専攻している学問に近い授業がなかったため、consumer behaviorの授業を受講させていただいた。この授業では、自国に特有の文化をディスカッションするというものであった。ここで驚いたのが、学生一人一人が自分の国の歴史や文化を理解し、他人に伝える力を持っていたことだ。このコミュニケーション能力に加え、Wi-Fiに繋がったノートパソコンを器用に扱い、適宜動画を見せながら流暢な英語で説明するその姿は詰込み型の暗記教育の日本とは全く異なるものであり、強く感服した。

3. 未来の光孤児院
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未来の光孤児院では両親を亡くした孤児や十分な教育を受けられていない子供が多数いた。プレゼントのお菓子と長縄を嬉しそうに受け取り、食べたり遊んだりする姿は、純粋無垢な人柄が垣間見えた。子供たちとの楽しい時間を終え、別れを告げようとしたとき、私は驚いた。「インスタグラムのIDを教えて」と言われたのだ。私の勝手な偏見で孤児院の子供たちはSNSをしていないと思っていたが、大間違いだった。彼らはSNSを使い、世界と繋がっていた。そして、「カンボジアに来ることはほとんどないだろうけど、インスタグラムでいつでも会えるよ」と言われ、SNSが本来持つ意義や使い方について改めて考えさせられた。

課題
インターネットの普及に伴う恩恵や発展がカンボジアの随所にみられた一方、今後のカンボジアの課題も浮き彫りになった。まずは、スマートフォンを狙った犯罪の増加である。私が訪れた日系の美容室のオーナーに最近のカンボジアの問題についてお話を伺った。通常スリの手口と言えば相手に気づかれぬよう財布などを盗むことであるが、近年はスマートフォンの需要に伴って強引にスマートフォンの入ったカバンごと盗むケースが増えているという。また、インターネットの進化に比べて電気、ガス、水道、道路などのインフラ整備が首都のプノンペンですら改善していく必要があると感じた。この美容室ですら電源は半分以上使い物にならず、ホテルもお湯は出ないことがほとんどであった。インターネットは確かに人々を豊かにするが、基本的なインフラ整備は生活基盤として優先的に確立させる必要がある。また、自国産業の発展も不可欠だ。プノンペンを走る車や携帯電話、パソコンなどはほとんど全てが他国生産品を輸入している。これからは、最新の技術を享受するにとどまらず、そこからオリジナルの技術を自国で身につけていくことが国の発展や雇用安定に直結すると感じた。

結言
近年、加速的に進むIT技術の発展の恩恵は、日本や欧米諸国のような先進国だけでなく東南アジアの発展途上国であるカンボジアにも確実に及んでいた。これからグローバル化がますます進み、世界中の国が手を結び共に発展していくことが希求されている中で、他国の手助けを借りつつ、国全体が一体となってIT事業などを含めた自国産業を盛り上げ発展していくことを切に願います。

参考文献
1) NEXT SHIFT
https://www.nextshift.jp/2018/08/12/682
2) カンボジア経済
https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/95f21b8b06d32e4d92ea2794243559be

謝辞
本遊学の審査委員長である半田晴久・在福岡カンボジア王国名誉領事に感謝の意を表します。同名誉領事館の中田様、長野様、福山様には専攻面接から遊学に関わる手続き、日程調整等を迅速に執り行っていただきました。心より感謝申し上げます。カンボジア大学で大変お世話になったジーナ・ロペス先生、案内してくださったり一緒に授業を受けた学生の方々、忙しい中受け入れをしてくださった未来の光孤児院のイット・ヴィラシーさん、ありがとうございました。最後に、本遊学プロジェクトに関わったすべての方々にお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

第11期生 平山 祐作 九州大学大学院 生物資源環境科学府

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~17時半
    (※ビザの申請・発行は12時半まで)

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
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