きよらのカンボジア留学体験記

福岡教育大学初等教育教員養成課程で美術専修の2年生。2014年に在福岡カンボジア王国名誉領事館が実施する「半田スカラシップ~カンボジア遊学生」の第6期生としてカンボジアを訪問したのを契機に、美術でできる支援のあり方を考えるため、カンボジアに1年間留学中。

失敗を経験

 都留文科大学(山梨県)の「カンボジア支援学生サークルPlenty」さんと一緒に、村にあるプレイドンハーム小学校で図工授業をしました。一日出前授業ということで、前日にPlentyの学生たちと打ち合わせをして向かいました。この五ヶ月間、何回も授業をしてきたのでどこかに油断があり、この日はたくさんの失敗をしてしまいました。
当日は、野外で約250人の児童と「大漁旗リレー」をするための旗を作る予定でした。しかし嵐のような雨が降っており、急遽各教室に二クラスずつ入り授業をすることにしました。そのため指示と指導が大変難しい上に、教室にまで雨が入ってきて水浸しになり、アクリル絵の具が児童の制服についたり、湿度が高いために絵の具は乾きにくく、絵の具が教室のあちこちについてしまいました。
子どもたちと先生方は楽しかったと言ってくれましたが、私にとっては失敗でした。私にとっての成功とは「児童と現地の教師が心から楽しい!面白いと感じること、教師が次も継続してやろうと思えるものであること」でしたが、私はどれも達成できなかったと判断しました。私は「自分が、教室と制服に絵の具をつけて帰っていく外国人になった」と、大きなショックを受けました。
 原因は、①下見をして環境の実態把握をしていなかったこと。②考えられる最悪の事態を予想できなかったこと。③十分な打ち合わせを学生や現地の教師と出来ていなかったこと。④自分の価値観が、他者に迷惑をかけるものであると分かっていなかったこと。⑤成功を達成するために、子どもたちへの適切な環境作りがまだ分かっていなかったこと、だと考えました。
 ショックと反省で大きく落ち込んだ私は、制服を弁償し掃除をしに行くという対応を選んでしまいました。これも失敗でした。そうだと分かったのは、母に事後報告をしてからでした。なぜなら、「汚れたら外国人が無料で制服をくれる」という印象を与えてしまったからです。洗うと少しは綺麗になることや、掃除をすることを教えていた方がよっぽど良かったのだと思います。
日本だと図工の時間は私立学校ではエプロンを着ます。公立学校で育ったせいか、私は自分の服に絵の具がつくことをなんとも思いません。だから、「洗ったり磨いたりすると汚れは落ちるんだよ」と、教えることを思いつきませんでした。逆に「消費」を教えてしまいました。自分の普段の生活習慣や価値観の怠けている部分が、こんな場面で判断を間違ってしまうのだと分かりました。
最終的に、「大漁旗リレー」は別の日に行いました。子どもたちは走ることや遊ぶことが大好きですから、笑顔の写真が撮れるのは当たり前といえば当たり前かもしれませんが、
遠い家から学校に来て、自分たちで作った旗を持って元気に走る姿を見ることができ、やはり嬉しかった。この貧しい村でも、教師たちが少しでも続けていける美術教育を一日出前授業でなく長期にわたり、携わり考えて実践し続けていけたらと思います。そして、今回の反省を必ず次に生かします。

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
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  • 開館時間 9時半~12時半

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
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