きよらのカンボジア留学体験記

福岡教育大学初等教育教員養成課程で美術専修の2年生。2014年に在福岡カンボジア王国名誉領事館が実施する「半田スカラシップ~カンボジア遊学生」の第6期生としてカンボジアを訪問したのを契機に、美術でできる支援のあり方を考えるため、カンボジアに1年間留学中。

美術教育の改善を考える

 現在はプノンペンのストンミンチェンにある「愛センター」というフリースクールで美術教育をしています。今までの授業は、まず「描くことが楽しい」ということをテーマに行ってきましたが、今回は「子どもの課題解決のための美術教育」を実施しています。
初め、彼らはいろんな色の絵の具を混ぜたいだけ混ぜ、適当に描いたり、人の真似をしたりしてぐちゃくちゃの画面ができていました。
 現地のスタッフと話し合い、子どもと遊んだりして彼らの現状をより良くし、彼らがもともと持っている良さを引き出せる授業を考えて実践していきました。授業を始めて3回目にはもう変化が見られました。丁寧に色を考えながら、道具も大事に使い、自分のこだわりや個性を出しながら本当に面白い絵をかくようになりました。目に見える変化が現れた時は、嬉しく、私ももっと工夫したいと思えました。
ある日のことです。愛センターのペットのねこを描く授業をしていました。アウトラインはかかないで、先に目や鼻や口を書いてからクレヨンでぐるぐる塗って形を作っていくように指導しました。その方が面白い形ができるかなと思ったのです。難しいかなと思いましたが、意外にもぐんぐん描けていました。
 ある子どもがアウトラインをかいてから塗ろうとしていたら、クラスの先生が「オットラウ(正しくない)」と言いました。そこで私は思いました。先生の言ったようにしなかった子ども(こだわりが強いか、新しいことが苦手か、先生への反抗か?)は、評価が下がってしまう。絵は好きだけど先生の言ったことが理解出来ない、したくない子どもはみんなと違う異端者、優秀ではないとなる。逆に先生の言ったことを上手く理解して自分なりに かいたら優秀となる。
 大学入試の国語の問題を解いている時を思い出しました。作者や作品へ感情を入れすぎずに問題出題者の意図を理解して文を読み問題を解く。器用な作品作りをさせないためには、先生が授業の中でどこをポイントにして、何を子どもたちに本当に伝えたいか、大切にしてほしいかをしっかり考えなければならないのだと思います。そこを間違えれば、絵が好きな子も、もともと面白いものを持っている子どもたちも、大人から間違って評価されて、美術嫌いになったり、描くという表現の面白さの一つを失ってしまうことになると思います。たとえ、日本の学校のように美術授業をする環境や道具があっても、それらを壊すものがいれば同じだと思います。
 今回の美術授業カリキュラムが、これからも「愛センター」で活用するそうです。改善と研究を繰り返して、現地のスタッフと面白いものを作れたらと思います。

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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開館時間 9:30~12:30
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