きよらのカンボジア留学体験記

福岡教育大学初等教育教員養成課程で美術専修の2年生。2014年に在福岡カンボジア王国名誉領事館が実施する「半田スカラシップ~カンボジア遊学生」の第6期生としてカンボジアを訪問したのを契機に、美術でできる支援のあり方を考えるため、カンボジアに1年間留学中。

児童養護施設の「土絵の具ワークショップ」で学んだこと

 現在は、NPO法人「JHP学校をつくる会(Japan team of young human power)」という組織で美術と音楽教育支援を勉強しています。毎週金曜日は「CCH(幸せの子どもの家)」というJHPが支援する児童養護施設で、午前と午後それぞれ3時間のアートワークショップに携わっています。私が今まで自分一人でやってきた買出しや授業案、教材研究などの準備、当日の運営をJHPとCCHのスタッフと一緒にしています。一人でするよりも大変難しいです。初めは、スタッフの性格や何が得意かなどなども分からず、ワークショップと授業の違いもはっきりしないままでした。
2回目のワークショップの時です。その日は、土絵の具を作って「おもしろフェイス」を作ることをしました。スタッフとイオンモールでダンボールをもらい、川沿いの砂を袋いっぱいに詰め、市場で顔のパーツとなるストローと、倉庫にある廃材を集めて準備をしました。当初の目的はこうでした。
 ①あまりお金をかけず、できるだけ身近なもので作る。
 ②土絵の具の感触を楽しんで腕を大きく使って描く楽しさを知る。
 ③友達と協力して大きな面白顔を作る。
実際に始めると子どもたちは驚きますが、ほとんど全員は手がいっぱいになるほど土絵の具で遊んでいました。しかし、時間が経ち作品ができてくると汚れた手をすぐに洗ったり、作品の上を無意識に踏んずけて歩いている子どももいました。彼らにとってはあまり、綺麗な作品とは言えなかったのだろうと思います。
 また、土絵の具の土という素材をあまり生かしきれい題材になってしまいました。どうして土絵の具を使うのかという目的が、「感触を楽しんでくれるだろう」という私の日本人的発想では、作品に繋げることができませんでした。それから、私は以前、ゴミを使った図工をしたいと考えていました。カンボジアの道端に落ちているゴミの量に驚き、それらの身近な廃材を使えば、お金をかけずに図工やワークショップができると考えていたからです。そうすれば、現地の人がお金をかけずに続けやすいだろうと思っていたのです。
 しかし、カンボジアではペットボトルやプラスチックごみ、ダンボールを回収してお金に変えている人達がいます。だからそんなゴミを再利用することは、必ずしもいい事ではありません。だからといって、筆洗のプラスチックケースを買うかと言われればやはりお金が必要です。いかにしてお金を生み出すかということは、誰しもが考えていか なければならない問題なのだと、恥ずかしながら理解しました。そして、経済と美術が関係しているのだということを実践やフィールドワークを通して分かってきました。
このワークショップの最終的目標は、現地学生と児童が自主的にアート遊びをしていく場になることです。今はまだ、この活動が始まって3ヵ月です。アートワークショップはあまり知らないけれど、工作が好きで子どものように遊ぶスタッフが主体的に動いていけるよう、私は意識しなければなりません。自分が何かしてしまう前に、現地スタッフに役割や仕事を発見させ、授業で大事なこと、それを伝えるための授業とその授業の流れ を一緒に考えます。これを実践するのは、私がそれらを見通せなければなりません。授業や内容の目的とゴールが見えてこそ軸がはっきりします。
カンボジア人的考え方を教えてもらい、私もおもしろいアートワークショップをたくさん研究して子どもたちの世界がおもしろくなるよう、実践を通した研究を残り一ヶ月半していきます。

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~12時半

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
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