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北九州市の海外水ビジネス 「協力外交」で成果着々

カンボジア政府の策定する主要9都市の水道基本計画に北九州市が技術コンサルタントとして参画することが決まり、19日、プノンペンで覚書が交わされた。地方自治体の水道ノウハウが、一国のほぼ全土に網羅されるという画期的なことである。

北九州市はカンボジアで海外水ビジネスの展開を目指しているが、策定に参画することで今後200億―300億円の事業費が見込まれる水道整備に関する情報のほとんどを入手でき、同市が官民でつくる「海外水ビジネス推進協議会」の加盟企業が工事を受注するチャンスが格段に広がった。

確かにカンボジアは小さい国だが、日本の一つの地方自治体を一国すべての水道整備に関与させることは常識では考えられない。なぜ、実現したのか。それは、一つの自治体による「協力外交」のたまものと言っていい。

カンボジアの水道復興を支援するため、北九州市が水道技術職員の長期派遣を開始したのが1999年。内戦が終結してから8年ほどたっていたが、「地雷の国」というイメージは強烈で、他の自治体が派遣に尻込みしていた中だった。

北九州市はこれまでに国際協力機構(JICA)の人材育成事業などを通じて延べ57人を派遣。プノンペンでは水道の漏水率を72%から先進国並みの8%に低減させたほか、24時間給水の実現も果たした。その後、プノンペン以外の主要都市で人材育成に携わっている。

この間、職員たちは慣れない海外生活の中、暴動に巻き込まれて滞在先のホテルを焼け出されたり、帰国当日の朝まで夜通しで浄水場の操作手順の確認につきあったりと、日本では体験しないような苦労を味わいながら水道復興に尽力した。こうした努力にカンボジアが絶大な信頼を寄せることは必然だろう。

19日、プノンペン水道公社のエク・ソンチャン総裁は、公社事務所を訪れた吉田一彦水道局長に対し、「私たちは北九州市水道局を兄だと思っている。日本は経済成長のために海外にどんどん進出すべきで、北九州市は水道分野でそのパイオニアだ」とあいさつした。

政府は海外水ビジネスを国の新たな成長戦略の柱の一つと位置付ける。日本では水道事業のノウハウを地方自治体が持っており、北九州市以外にも東京都や横浜市、大阪市が海外水ビジネスに名乗りを上げているが、関係者からは「着実に成果を上げている北九州市のほぼ独走状態だ」という評価が聞かれる。

しかし、自治体による海外水ビジネスの取り組みは始まったばかり。「これから先はだれも経験していない未知の領域」(関係者)。だからこそ、自治体でトップをひた走る北九州市の挑戦は面白く、興味が尽きないのだ。

【写真】技術コンサルタント参画の覚書に署名する北橋健治・北九州市長(前列左)=19日、プノンペン

2011年12月23日西日本新聞

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