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カンボジアでアイドル輝け

 世界遺産アンコール遺跡群のあるカンボジア・シエムレアプで、カンボジア人の3人組女性アイドルグループ「POXX(ポックス)」がデビューした。プロデュースは、写真スタジオで働く阿部愛由美さん(26)=大分市出身=ら、現地在住の20~30代の日本人。「この国の若者を輝かせたい」と張り切っている。(バンコク野中彰久)

新しいもの、日本がお手伝い

 3月初め、カンボジア人の若者約20人が木陰に集まっていた。POXXのバックダンサーの練習だ。デビュー曲のテクノポップ調の速いテンポについていけない者もいる中、POXXのリーダー、TATAさん(16)が軽やかにお手本を示した。

 高校2年のTATAさんは昨年夏、映像クリエーターの高松謙一郎さん(33)や阿部さんが始めたスター発掘プロジェクト「CSA」のポスターを自宅近くで見つけた。「面白そう」。韓国のポップアイドルのダンスを一緒にまねしていた仲良しのKAVIさん(15)と、高松さんのもとに通い始めた。


 とはいえ、TATAさんは歌が少し苦手だった。「カンボジアでは小学校に音楽の授業がない。合唱の機会もないので、歌うことに慣れていない子が多い」と阿部さん。高松さんの妻で音楽講師の怜奈さん(33)が歌の基本を教え込んだ。今ではバラードを歌いこなすまでになり、TATAさんは「大丈夫、大丈夫」と笑顔を見せる。

 メンバーのLENUさん(16)は「応援してくれている人たちのためにも頑張る」。KAVIさんは「POXXやCSAの仲間と出会えてうれしい」と話す。

「POXX」大分出身・阿部さんらプロデュース

 「カンボジアでは、テレビで流れる歌のほとんどが韓国やタイ、米国の曲のコピー。オリジナルはとても少ない」。高松さんはそう感じていた。そこには、長い内戦の後、外国の援助に頼ってきたカンボジア社会の問題があるとみる。資金も文化も「外国から」。その結果、自ら新しいものをつくり出す自信を失ってしまったのではないか-。「だから、成功事例を示して、これからこの国を担う若者に夢を与えたい」

 そんな思いに共感した阿部さんら仲間と昨年春、CSAをスタートさせた。これまで、プロのヘアメークアーティストが女子大学生を変身させるイベントや、交流サイトのフェイスブックによるミスコンテストを実施している。POXXのデビューでは、モデル経験のある阿部さんが歩き方や表情を指導。阿部さんの知人のミュージシャンが曲を作り、現地在住の日本人ダンサーが振り付けた。

 デビュー曲は動画サイトで発信する一方、地元のテレビ局やCMで使ってくれそうな日系企業などに売り込みをかける。「大きな芸能事務所がないからビジネスの可能性がある。将来は東南アジアで活躍するアイドルを育てたい」。カンボジアの大平原を焦がす太陽のように、高松さんたちの思いは熱い。

写真1:カンボジアでアイドル輝け アイドルグループ「POXX」の3人。左からLENUさん、TATAさん、KAVIさん
写真2:打ち合わせをする高松さん(左)、阿部さん(左から3人目)たち
写真3:公園の木陰で練習するバックダンサーの若者たち

2015年3月16日 西日本新聞

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