- 開館日 月曜日~金曜日
- 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
- 開館時間 9時半~12時半
年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。
唯一のプロリーグ
カンボジアのサッカー代表が2018年のワールドカップ(W杯)ロシア大会の1次予選を突破して初めて2次予選に進出した。日本と同組で本大会出場を目指す。著しい経済成長に比例するようにサッカー人気が高まっている。サッカー・カンボジアリーグは、カンボジアでは唯一のプロリーグ。カンボジアンタイガーFCが、昨年末のチーム解散危機を乗り越えて7月に開幕するリーグ戦への準備を進めている。クラブを救ったのは現GMで、当時チームの営業スタッフだった吉田健次さん(32)だ。
自身の預金を使い
昨年12月、クラブオーナーの日系商社が業績悪化を理由に運営から撤退を発表。2013年に発足し、昨年昇格した1部リーグで12チーム中5位と健闘した新鋭クラブは窮地に陥った。「このまま選手とその家族を放り出せば、この国の子どもはサッカーに夢を持てなくなる」。途方に暮れる選手を見つめながら、吉田さんは思い悩んだ。
「個人でチームを引き継いでこの危機をしのごう」。自身の預金約500万円でクラブを運営できるのは約2カ月。その間に支援先を見つければ、チームは継続する。さまざまな企業に話を持ち込む一方、ブログで現状を発信。知人を通じ、複数の日本企業が興味を示してくれた。帰国後、企業を訪問。3月、東京のコンサルティング会社「フォワード」にクラブ所有権を譲渡した。
プロスポーツに関わる仕事がしたい-。吉田さんは13年春に東京のIT関連会社を辞めた。Jリーグクラブでは採用を得られず、このクラブが夢につながった。「スポーツで完全燃焼できなかったことが今の情熱につながっているのかも」。福岡市西区出身。小学生時代はサッカーや野球で駆け回った。ところが、中学1年で腎臓の病気、ネフローゼ症候群を発症し、長期の入院と療養。部活動はもちろん、体育の授業も制限された。症状は治まったが、今も半年に1度の検査を欠かせない。
国の希望の象徴に
内戦終結から約20年。タイとの国境地帯にはいまだ多くの地雷が残る。一方、首都プノンペンの人口は150万人を超え、次々と高層ビルが建設されるなど発展は目覚ましい。マンションなどが立ち並ぶプノンペン中心街。サッカーコート半分ほどの練習場でカンボジアンタイガーFCの選手がボールを追う。
クラブは現在、J2アビスパ福岡で活躍した木原正和監督(28)の下、上位進出を目指してトレーニングを重ねている。日本語のホームページでは日本から協賛金を募り、カンボジアの子どもたちにサッカーボールを贈る事業も展開。「裾野を広げ、世界的スター選手を育てたい。サッカーがカンボジアにとって希望の象徴になれば」。異国でかなえた夢がカンボジアのサッカー少年の未来と重なっていく。 (泉修平)
写真:一時帰国した福岡空港で「カンボジアと日本の架け橋となるようなクラブにしたい」と語る吉田さん
2015年5月8日 西日本スポーツ