カンボジア&九州ニュース

春秋

昔々、ペンさんという信心深い女性が川で仏像を見つけた。丘(プノン)に寺を建てて祭ると、人々の信仰の場になったそうだ。カンボジアの首都プノンペンの名は、この「ペンさんの丘」の故事に由来するという▼今は公園も整備された丘の一角に雌のゾウがいた。名はサンボ。観光客を背中に乗せて散歩したり、バナナをくるりと鼻でつかんだり。誰からも愛される人気者だった▼そんなサンボには悲しい過去があった。重労働や粛清で、150万人ともいわれる国民が犠牲になったポル・ポト政権下。サンボも農村に送られ、満足な食べ物も与えられず酷使された▼「彼女の足は(ポル・ポト軍の)クメール・ルージュにおので切りつけられ、ほとんど死にかけていた」「サンボも私もつらい時代を生きてきた。サンボは私の妹も同然です」。飼い主の男性の話を地元メディアが伝えている▼プノンペンにただ1頭だけのゾウ、そして暗黒時代を生き抜いた象徴でもあったサンボ。昨年、引退した。記念の式では多くの僧侶がお経を唱えた。市民からは山盛りの果物が届いたそうだ▼ポル・ポト派がプノンペンを制圧したのは1975年4月。40年前は恐怖に覆われた都市は今、日本や中国、韓国からの投資ブームに包まれる。強制移住で廃虚になった市街は再開発の活況に沸いている。静かに余生を、とサンボは保護区に放たれた。一つの時代を見届けて。

2015年5月25日 西日本新聞

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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