- 開館日 月曜日~金曜日
- 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
- 開館時間 9時半~12時半
年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。
4月初旬、カンボジアの首都プノンペン。繁華街に構える食堂の壁に掛けられたカレンダーには、日付のそばに小さな仏像の絵が書き込まれていた。めくると月に4、5日。聞けば満月、半月、新月に当たり「仏日」と呼ばれるそうだ。
カンボジア人にとって、その日は「特別な日」。国中の至る所にある寺に早朝から、食料や農作物の供え物を届ける。「仏教の国にはどこでも仏日はあるが、カンボジア人は特に信仰心があつい」。長年、仏教系の非政府組織(NGO)メンバーとして在住し、現在、カンボジア宗教省仏教研究所のアドバイザーを務める手束耕治さん(60)は指摘する。
アンコールワットは12世紀、ヒンズー教の寺院として築かれ、後には仏教の寺院としても使われた。
カンボジア国民約1500万人のうち、9割超が仏教を信仰する。「寺の役割は多様」と手束さん。学校に通えない子どもたちに読み書きを教える教育施設、身よりのないお年寄りを引き取る福祉施設、選挙の投票所にもなる公共施設…。「寺は地域の中心にあり、国民の暮らしに寄り添っている」
カンボジア人が寺に求めるのは、現世の御利益と来世の幸せ。石には精霊が宿っていると広く信じられており、とりわけ石像は特別な存在だ。今以上の来世の幸せを願ったり、家族の病の回復を祈ったり…。寺には寄進された石仏がそこかしこに並ぶ。
長く続いた内戦の後、外国資本が参入し、近年は7%前後の経済成長率で推移するカンボジア。都市部と農村部の格差はあるものの、国民の生活は全体として豊かになりつつある。
プノンペンの石像販売店の店頭で、1体2千米ドルの石像を見つけた。宿泊したホテルの従業員の月収は聞けば40米ドル-。かなりの高額だが「たまに売れるよ。石像を買い求める人は間違いなく増えたね」と、店員のリム・ソニムさん(41)。「石像はカンボジア人の信仰そのもの。石像の数だけ人々の願いがあると思ってもらえればいいよ」と笑顔で教えてくれた。
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荘厳なアンコールワット、人々が祈りをささげた神仏の石像…。独創的な「美」を追求したカンボジアは人々の心に安らぎを与える。福岡市美術館で開催中の「アンコール・ワットへのみち 神々の彫像」で紹介されている作品の「古里」を訪ねた。
写真:大小の石像が並ぶプノンペンの石像販売店
2015年5月29日 西日本新聞