カンボジア&九州ニュース

水市場を掘れ 北九州 世界への挑戦<1>歩み 協力からビジネスへ―連載

 プノンペンの奇跡-。世界の水道事業関係者は、そう評する。

 カンボジアの首都プノンペンでは、ほとんどの住宅で24時間、蛇口からきれいな水が出る。東南アジアの水準をはるかに超える日本並みのサービス。それを、ポル・ポト派による大量虐殺と続く内戦で荒廃しきったカンボジアが、2006年までのわずか13年で達成したのだ。

 内戦終結直後は、粗悪な水道管からの漏水がやまず、水を横流しする工事業者の不正も横行。給水は1日10時間、水道普及率はわずか25%にすぎなかった。プノンペン市水道公社(PPWSA)の総裁、イク・ソン・チャンは語る。

 「職員の仕事はいいかげん、計画を立てて物事を進められない。漏水の場所を探し当てるのもすぐにはできなかった」

 主に漏水によって料金を徴収できない割合を示す無収水量率は、当時72%の高さだった。それが今では6%。40―50%に上る国が多い東南アジアではまさに「奇跡」。実現した陰の功労者が、北九州市だった。
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 国際協力機構(JICA)によるカンボジアの水道事業に北九州市が職員を派遣し始めたのは1999年。まず、工業都市づくりで培った漏水防止技術を伝えた。

 総延長1300キロの配水管網を41のブロックに分割し、それぞれに配水メーターを設置。数値をチェックし、最も無収水量率が高いブロックを集中的に調査させた。

 その結果、発見できずに放置されていた水道管の漏水がすぐに見つかるようになった。腐食部分の交換、補修もスピードアップ。夜間に確認した漏水を翌朝までに報告しないと罰を受ける仕組みも導入された。

 「漏水は経営に大きなダメージを与えるという危機感を職員一人一人に浸透できたことが大きい」(同市水道局)

 イク・ソン・チャンは06年、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞。今年6月にはPPWSAが世界的なストックホルム産業水大賞を受けた。「多くの専門家を送ってくれた北九州市のおかげだ」
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 青と赤を基調にしたカンボジア国旗と日の丸。高さ30メートルの給水塔に描かれた両国の旗が、真新しい輝きを放っていた。

 06年、世界遺産「アンコールワット」のあるシエムレアプに日本の無償援助で建設された浄水場。「ここの水質は日本並み」。3月に北九州市から派遣された石井秀雄(39)は胸を張る。

 ただし、シエムレアプの水道普及率は19%、カンボジア全体でも30%台と低迷している。プノンペンはあくまでも例外だ。地方都市の人材育成を担当している石井は「地域によって人材や水質レベルの格差が激しい」と指摘する。

 鉱工業エネルギー省の水道部長タン・ソチーアは「もっと多くの国民がきれいな水を使えるようにしたい」と訴える。最大の悩みは、地方にインフラを敷設する財政力がないこと。頼みは、外国企業が自前の投資で展開する「水ビジネス」。これまでに延べ45人の職員を派遣した北九州市は、その最有力候補だ。

 「北九州市が水ビジネス? もちろん、ウエルカムだよ」とタン・ソチーア。協力関係がビジネスに変わることに、こだわりはない。 (文中敬称略)
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 人々の生活に欠かせない「水」。アジアの新興国では、経済成長のスピードに上下水道整備が追いつかない。「アジア」と「環境」をキーワードに地域浮揚、都市再生を目指す北九州市は8月末、自治体として初めて官民一体の協議会を設立。優れた水道技術を武器に厳しい国際競争が展開される海外水ビジネス市場へ挑む。行政と企業による「チーム北九州」の可能性を探る。

【写真】カンボジアの水道技術者を集め、水道管のバルブ操作を指導する石井秀雄さん(中央)=8月上旬、カンボジアのカンポット

2010年10月1日朝刊

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