半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第12期】若さとパワーのカンボジア


本遊学のねらい

私は,この遊学を通じて,カンボジアにおける教育の現状を知ること,またその状況下で付随して引き起こされる現象について知るということを狙いとして設定した。

1. カンボジア大学について

今回,私は,在福岡カンボジア王国名誉領事である半田晴久氏が総長を務めるカンボジア大学を主にして訪問を行った。現地の学生らとともに授業を受け,課外活動に参加し,食事を共にした。これらの経験を通じて私が得たことを以下に記す。

1-1. 概要

カンボジア大学はプノンペン特別市にカンボジア王国首相補佐特命大臣兼カンボジア大学理事会理事長のKao Kim Hourn博士とカンボジア王国顧問兼国際芸術文化財団創設者の半田晴久氏が2003年に開学した高等教育機関である。同大学は教育学部や科学技術学部など幅広い12の学部を抱え,同時にアジア信仰開発対話など多数のシンクタンクを設立している。

1-2. 教育環境

カンボジア大学のメインキャンパスは11階建ての建物であり,基本一つの階に2つの学部・科があり,最上階には多国語の書籍を取りそろえるToshu Fukami図書館がある。カンボジア大学の授業は基本的に英語を通じて行われる。一つの授業は90分間であり,科目によっては2校時続けて行われる。授業ではプロジェクターが積極的に使用され,教授は基本的にプレゼンテーションソフトを用いて授業を進める。科目によっては生徒の理解度合いを確認するために,授業の初めにプレゼンテーションを課すこともある。一つの授業を20人から50人ほどの人々が受講し,席の数も十分存在する。すべての教室には空調があり,インターネット環境も存在する。成績優秀者には学費全額免除の奨学金も賞与される。また,ディベート部や演説部をはじめ,課外活動もまた盛んである。

1-3. 生徒の層について

カンボジア大学の生徒はほぼ全員がカンボジア人であり,留学生等はほぼ見られない。しかしながら,出身地は多種多様である。首都であるプノンペン出身のものもいれば,港湾都市のシアヌークビル出身の者もおり,隣国タイ王国との国境付近に位置するシソポン出身の者もいる。

1-4. 短所

設備の老朽化が進行し始めている。手洗い場の蛇口がぐらついていたり,エレベータのディスプレイが歪んでいる,という事象がみられた。また,メインキャンパスが11階建てであるため,エレベータの使用が盛んであるが,台数が不足している。インターネット環境においては,低速であり,また学生向けに開放されているWiFiネットワークにはパスワードロックや認証機構がなく,セキュリティの観点からして脆弱である。
また,カンボジア特有の英語の発音により,外国人教授とカンボジア人生徒の意思疎通が上手くいかない様子が見られた。

1-5. 他の教育機関と比べて

他の教育機関は高等教育も含めクメール語で授業を行っていることが多く,そのため英語など外国語を話すことができる生徒は決して多くはない。しかしながら,カンボジア大学の生徒はみな英語を話すことができ,授業中ではほぼ英語で会話がなされている。そのため,同大学は他のカンボジア国内の大学に比べ,世界を相手とする職種もしくは海外進学で大きな利点を持っている。

1-6. まとめ

カンボジア大学は主にカンボジア国内の学生に対し,広く高等教育を提供している。設備の老朽化や衛生環境などの問題はあるが,未来ある若者に対し,さらなる教育にアクセスする機会を与えるという点で,カンボジア大学は大きな意義を持っていると考えられる。

../2023/2023_img/post_3/post3_1.jpg

2. Handa Academyについて


概要

Handa Academyは2018年5月に開校した教育機関であり,カンボジアにおける貧困の繰り返しを防ぎ,不利な状況にある子供らが自立した成功者になるための援助を得られるよう,英語やIT,スポーツ,衛生面や健康に関する教育や職業訓練,リーダー育成などを行うことを主眼に,もとよりHanda Medical Centreが位置していた同国3番目の都市バッタンバンに設立された。

教育環境

Handa Academyは実験農場と接続した広大なキャンパスを持ち,その中に教室のみならず集会場や屋根付きの運動場など,多岐にわたる設備を有している。また,教室においても空調が備わっているほか,コンピュータ室には一クラスの人数を優に超える数のコンピュータが整備されていた。授業は主に地元の小学校の始業前と放課後に行われ,送迎のほか食事の提供もあるそうである。英語教育に特に力を入れており,様々なクラスで英語の授業を行っている姿が見受けられた。

../2023/2023_img/post_3/post3_2.jpg

生徒の層について

生徒はバッタンバンにある小学校のうち主に3校から集められており,彼ら彼女らの両親は他国に出稼ぎに出ているというケースが多いそうである。そのため,祖父母や他の親戚の下で面倒を見られていることがほとんどで,なかなか追いつかない教育の面倒を同施設で見ているとのことであった。



3. カンボジア社会でくらす


都市間格差

私は今回の遊学で主にプノンペン,シェムリアップ,バッタンバンを訪れた。それぞれカンボジア第一,第二,第三の都市である。プノンペンは首都であり,カンボジア経済の中心地といえる場所である。シェムリアップはアンコールワットをはじめとした観光資源で知られている街であり,バッタンバンは日本でいえば福岡のような,都市と住宅街と自然を近距離に併せ持つ都市である。しかし,これらの3都市でさえ大きな格差が存在する。まず,教育面では医学部のある大学はプノンペンにしか存在せず,ほかの都市には存在しないそうである。この結果,医療面でもプノンペンへの一極集中がみられる。また,プノンペンの道路がほぼきれいに舗装されているのに対し,シェムリアップでさえ舗装路に穴が開き,バッタンバンでは中心街を出るとすぐに未舗装路が現れる。さらに,これらの状況がまた発展を阻害するという,格差の再生産が起こっているように思われた。

政治

カンボジア王国では人民党党首フン・セン氏が首相を38年間務めており,選挙方式自体は民主主義をとっているものの,決して健全な状態であるとは言えない。氏は過去2013年に当時の最大野党救民党が与党人民党の得票数に肉薄したことを踏まえ,2017年に同党の党首を逮捕したうえで解党処分を下した。そのため,翌18年の選挙は人民党が全議席を独占した。また,昨年6月の地方選において2割越えの得票を果たしたキャンドルライト党に対しても書類の不備を理由に今年の選挙参加を認めなかった。同氏は今年7月に長男であるフン・マネット氏に首相の座を譲ることを表明したが,いまだ氏の権力は健在である。

大気汚染・悪臭

大気汚染について,プノンペンでは特に大気汚染が激しく,朝方は前方が曇って見えるほどである。これは,ただ単に交通量が多いのみならず,過積載車両が多いことや,流通している自動車に旧型のものが多いことが大きな要因として挙げられる。カンボジア王国にある自動車のほぼすべてが輸入車であるが,その輸入車に対し排ガステストが課されるようになったのが2022年1月であり,現在も規制以前に輸入された車が主になっている。悪臭については,上記の排気ガスの現象のみならず,肉屋が肉を道路に面した野外で処理していたり,魚屋が魚を常温状況下で販売していることなどが原因として挙げられる。

../2023/2023_img/post_3/post3_3.jpg

カンボジア市中の様子

カンボジア市中は治安が良く,犯罪はほぼ見られない。観光客相手の押し売り,ぼったくり等は存在するが,どれも断ろうと確固たる意志を持てば断れる程度ものである。身体的な危険を感じたことはないといってもよいと思う。市中の人々はとてもやさしく,クメール語を話せなくともとても親切に扱ってくれる。一方,交通マナーに関しては少し注意が必要である。交通マナーは決して良いとは言えず,横断歩道もほぼない。しかしながら,事故はほぼ見られない。ドライバーたちの努力と動体視力の賜物といえるだろう。


4. 所感

まず,カンボジア王国は一般的に現在後発発展途上国と言われている通り,周辺の国と比べて経済発展が遅れている。私はこれはいまだに教育が十分に行き届いていないほかに,人材が特定の職種に偏っているからであると考える。カンボジア王国国内にはカンボジア大学や王立プノンペン大学をはじめとしいくらか高等教育機関があるが,学費の問題などもあり,学生らはいわゆるエリート層に限られているといった印象であった。職種別の偏りについては,カンボジア王国では観光業が一大産業となっているのだが,観光業従事者は英語を話すことができる割合がほかの業種に比べ非常に高く,他の分野から高度な技術を持った人材が流出しているのではないだろうか。
また,生活基盤整備のおくれも目立つ。首都プノンペンの中でもきれいな水道水が使えるのはごく限られた部分で,他の部分では十分に浄化されていない。道路も首都のプノンペンでさえ舗装されているのは車道のみであり,歩道は未舗装であるか舗装済みであったとしても整備不良で土 見えるような状況である。また,歩道はあったとしても基本的に駐車場もしくは露店の出店場所として使われており,人が通る隙間はない。その他治安維持の部分においても,警察の数が少なく,交通違反はほぼとがめられることがない。このような状況下で,外国資本も進出の二の足を踏む状況が起きているのではないだろうか。


5. 参考文献

1) Paddock, R. C., & Wallace, J. (2017, September 2). Cambodia Arrests Opposition Leader, Accusing Him of Treason. The New York Times.
https://www.nytimes.com/2017/09/02/world/asia/cambodia-kem-sokha-arrest-hun-sen.html

2) Vanyuth, C. (2023, June 19). ‘Service Sector to Become Cambodia’s Largest by GDP.’ Khmer Times.
https://www.khmertimeskh.com/501315918/service-sector-to-become-cambodias-largest-by-gdp/#:~:text=Last%20year%2C%20the%20industry%20sector,percent%20and%2021%20percent%2C%20respectively

3) Vinall, F. (2023, July 26). West Point Trained the Heir to Cambodia’s Autocracy. Who Is Hun Manet? The Washington Post.
https://www.washingtonpost.com/world/2023/07/24/cambodia-hun-manet-sen-succession/


6. 謝辞

本プログラムの審査員長を務める半田晴久在福岡カンボジア王国名誉領事に感謝いたします。また,同名誉領事館のみなさま,西日本新聞メディアラボのみなさまには渡航前より長きにわたってサポートしていただきました。心より感謝を申し上げます。さらに,カンボジア大学において学業面のみならず現地の暮らしについてもサポートを提供してくださったMs.Rathana,Ms.Kim,またPublic Speaking Clubにおいて暖かく出迎えてくれたMr.SamboやMr.Rolinをはじめとするメンバーの皆様,The Handa Medical CentreとThe Handa Academyにおいて案内をしてくださり,訪問を非常に有意義なものとしてくださったDr.Gerlindaにもまた深く感謝いたします。最後に,カンボジア王国の心優しき皆様に感謝を述べるとともに,今後の両国関係のさらなる発展と友好を願って,本レポートの終わりとさせていただきます。

../2023/2023_img/post_3/post3_4.jpg

第12期生 秦 幸生 九州大学 共創学部

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~12時半

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
問い合わせフォーム