半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第14期】MORIVITIAの始まり

参加経緯

私が今回、半田スカラーシップに参加しようと決意したのは、以前カンボジアを訪れた際の体験が大きなきっかけです。現地では、私よりも幼い子どもたちが将来の夢を熱心に語ってくれる一方で、家庭の経済的事情を理由に夢を諦めざるを得ない現実を多く目にしました。特に農村部では収入が極めて少なく、医療費に充てられる金額も限られていました。病院にかかる際には近隣の人から借金をして治療を受けるケースも多く、その結果、多額の借金を抱え、子どもたちの将来にまで影響が及んでいる現状を知りました。このときに「経済的理由で夢を諦める子どもを減らしたい」と思った事がきっかけです。放課後に図書館で探しているときに「モリンガ」というスーパーフードと出会いました。モリンガは牛乳の約19倍のカルシウム等多様な栄養素を含み、栽培が容易で収穫量も多いことが書かれていました。私は、このモリンガを農村部で栽培・普及することで、住民が日常的に摂取できるようになれば、予防医学の観点から病気を防ぎ、結果として医療費削減に繋がるのではないかと思いました。しかし、モリンガに関する情報は乏しく、中々一筋縄では進まず、カンボジアの農林省や製薬業者など複数の機関に問い合わせても納得のいく結果が得られませんでした。諦めかけた矢先、今回の半田スカラーシップという制度をみつけ、今回この貴重な機会に参加することができました。

現地調査

最初に取り組んだのは、カンボジアにおける医薬品の流通状況の調査です。ショッピングモールのドラックストアや地域の人が多く集まる市場等多くの店に行ってきました。ここで驚いたのは医薬品の種類の多さです。特にプノンペンのイオン内のドラッグストアでは、症状を伝えると薬剤師が適切な薬を提示してくれ、一錠単位で購入できる仕組みがありました。日本では箱単位での購入が一般的であるため、この「必要な分だけ買える」仕組みは、とても印象的でした。しかし、錠剤がバラ売りされるために薬の説明が不足し、正しい用法・用量や副作用情報が不十分である点は課題としてあると感じました。また、市場では漢方薬の取り扱いが中心で、購入者は煎じて服用するなど伝統的な方法が残っており、医薬品と民間療法が併存している姿がよくみられた。

モリンガ農家さんとの出会い

プノンペンで医薬品の現状を勉強した後、いよいよモリンガについて調べ始めました。しかし、現地の人々や漢方店の人に聞いても「モリンガ」を知る人はだれもいませんでした。もしかしてカンボジアにはモリンガがないのかもしれないと焦っていて、ネットの情報を読みあさっていたら一件だけモリンガを扱う店を見つけ、町の中心部から数十キロ移動して訪問しました。到着すると、店舗周辺にはモリンガのポスターやモリンガのイラストを貼った車がおいてあり、これまで街中ではモリンガのイラストはもちろん文字さえ見つからなかったのでとても感動しました。しかし、突然訪問したため従業員の方々は驚かれていました。後でお話をして知ったのですがこの店は家族経営をしているため業者の人や身内の人が一日に数人くるぐらいの為日本人の学生が来た事がとても珍しかったそうです。しかしながら、店に入りお店の方に「カンボジアの子供達に夢を選べる世界をモリンガで作り出したい」と説明すると笑顔で迎え入れてくださり、栽培や販売の現状について丁寧に教えていただきました。その中で特に印象的だったのは、従業員の方自身がモリンガを日常的に摂取し、以前より病気にかかりにくくなったと実感しているという話でした。医学的エビデンスはまだまだ解明されていないものの、実体験を聞けば聞くほど今後モリンガ研究を進める価値がとてもあると確信しました。また、「大学で研究を進める際はいつでも相談してほしい」と言っていただき、今後の研究に繋がる貴重な出会いとなりました。

半田アカデミーでの活動

プノンペン滞在後、バッタンバンへ移動し、半田アカデミーで約一週間お世話になりました。そこは「フリースクール」とは思えないほど充実した設備を備え、教科書や給食も整っており、何より先生方が子どもたちを第一に考えて教えているところがとても印象的でした。
特に驚いたのは教育水準の高さです。小学生からプログラミングを学び、英語も生活の中で実践的に使っているため、多くの生徒が自然に英語を話せていました。なぜ日本では英語を学べる環境が非常に整っているのに英語が話せる人が少ないのかを疑問に持ち先生に聞いてみました。すると英語の先生から「日本のように紙に書くだけでなく、体験を通じて学ぶから身につく」と教えていただき、アウトプットの重要性を実感しました。学校について学んだ後、今回半田アカデミーに行く目的である、モリンガ普及と給食への導入拡大に向けて準備を行いました。今回半田アカデミーで担当してくださることになったジュリア先生に今回の半田アカデミープロジェクトでの私の目的を話したら、「明日プレゼンの場所を用意するから君の熱意をプレゼンで示してほしい」と夕方に提案され、ホテルに帰ってから寝らずにプレゼンの資料と原稿を全て英語で用意しました。全部を1人でしかも英語でプレゼンをしないといけなかったので、とても大変な時間を過ごしました。しかし、私のプレゼンはジュリア先生をはじめ多くの先生方に賞賛していただきとてもうれしかったです。プレゼン後実際に学校の敷地内にある農園で生徒達とモリンガを植えました。想像よりモリンガの育て方が簡単なことに驚いたのと同時にモリンガの育て方を知っている方とカンボジアで出会えたことに感動しました。加えて、子供達が楽しそうにモリンガを植えているの見ると今までの出来事が走馬灯のように蘇ってきました。

半田ホスピタルでの研修

半田アカデミーでの活動を終えた後は、半田ホスピタルにて病院研修を行いました。薬剤師の方から処方や薬の種類について教えていただいたところ、流通している薬の多くがインドからの輸入品であり、カンボジア産はほとんど見当たりませんでした。また、病院では漢方薬を扱っておらず、購入には専門の店に行かなければならない点も特徴的でした。
さらに、貧困層向けの「Povertyカード」について学ぶ機会もありました。一定の条件下で医療費が免除される制度ですが、実際にはB型肝炎治療薬のような高額な薬には適用されないなど制約が多く、経済的な格差が医療アクセスを左右している現実を痛感しました。日本の医療制度がとても公平で恵まれている事を改めて考えさせられました。

全体を通して

今回の約3週間の遊学は、決して簡単なものではありませんでした。英語でのプレゼン準備、39度を超える高熱、慣れない環境での生活など多くの壁がありました。しかし、その度に現地の方々や遊学生の仲間に支えられ、乗り越えることができました。特に、同じ志を持つ遊学生との交流は非常に楽しく、話しているとあっという間に時間が過ぎていきました。この経験を通じて、私は「モリンガは必ず未来を変える」という確信を得ました。今後は大学でモリンガの研究を進めると同時に、現地で得たネットワークを活かして実践的な活動に繋げていきたいと考えています。最後に、このような貴重な学びの機会を与えてくださった半田スカラーシップ関係者の皆様、そして在福岡カンボジア王国名誉領事館の皆様に心から感謝申し上げます。今回得た経験を必ず今後の研究と人生に活かしていきます。
本当にありがとうございました。

第14期生 小西 恒星 福岡大学薬学部薬学科

在福岡カンボジア王国名誉領事館

  • 開館日 月曜日~金曜日
  • 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
  • 開館時間 9時半~12時半

年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。

開館時間 9:30~12:30
問い合わせフォーム