半田スカラシップ・カンボジア遊学生企画 レポート

【第14期】カンボジアの医療から学ぶ

<遊学の狙い>

私は将来、発展途上国で医師として働きたいという目標を持っている。医療資源や人材が不足している地域で、一人の医師として患者を治療し、地域医療の発展に貢献することを志している。そのためには、現地の医療体制や文化、社会背景を理解し、どのような支援が必要とされているのかを学ぶことが不可欠であると考えている。今回の遊学の狙いは、カンボジアの医療現場や教育環境を直接見学することで、日本の医療との違いや現地が抱える課題を理解し、自身の将来の目標実現に向けた具体的な学びを得ることにあった。また、海外での経験を通じて、日本の医療の水準や自国文化を相対的に捉え直す機会にもしたいと考えた。残り2年間の医学部での学びをどのように深化させるべきかを考えるきっかけとすることも、本プログラムの重要な目的であった。

<体験・学んだこと>

The University of Cambodia

首都プノンペンにあるThe University of Cambodiaを訪問した。訪問期間は試験期で授業数が限られていたが、英語や経済の授業、人前でのスピーチ練習などに参加させていただいた。また、クメール語を学ぶ授業にも参加し、挨拶や数字を習った。「Jouy nhom phong(Please help me)」という表現を習いこのフレーズを使う機会を窺っていたが、今回の旅では使う機会が無くて残念であった。クメール語は発音が難しく、言語を通じて文化の奥深さを体感した。英語の授業は大学で最もレベルの高いクラスに参加させてもらった。18歳前後の学生たちが流暢に英語を操る姿に刺激を受けた。日本の大学生と比べても語学力の高さが際立ち、早い段階から国際社会を意識して学んでいる姿勢に強い印象を受けた。加えて、伝統楽器や舞踊を教えていただき、文化的体験を通じて学生同士の交流も深まった。彼らは自国の文化や歴史について自信をもって説明してくれた。対照的に、私は日本文化を十分に説明できる自信がなく、特に長崎大学の学生である以上、原爆の歴史については深く学び、発信できる存在であるべきだと痛感した。自国文化を英語で説明できる力を磨く必要性を強く感じた。

The Handa Medical Center

次に、バッタンバンにあるThe Handa Medical Centerを訪問した。同院は整形外科分野に強みを持ち、特に交通事故患者の治療を数多く担っていた。カンボジアではヘルメットを着用せずにバイクを運転する人や、一台のバイクに3、4人も乗っているバイクが街中で見受けられ、それに伴う外傷患者や、交通量が多いことでの事故による負傷者が頻繁に搬送されていた。それらの患者に対して手術を行い社会復帰させていた。The Handa Medical Centerでは、カンボジア出身の医師だけでなく、世界各国から派遣された医師が教育・診療に参加していた。手術や画像診断を通じて国際的な医療協力の形を直接見ることができた。印象的であったのは、患者が受診する時期の遅れである。例えば、交通事故で靭帯を損傷した患者が受傷から4週間後に来院し、修復が困難になっていた。早期に受診していれば治療できた可能性があったが、経済的理由や医療機関へのアクセスの問題から受診が遅れてしまう。この経験から、単に医療施設や技術を整備するだけでは不十分であり、医療を受けやすい仕組みや保険制度の充実が不可欠であることを学んだ。また、医療資源が限られる環境下で工夫を凝らした治療が行われていた点も学びが大きかった。例えば鼠径ヘルニアの手術では、日本同様にメッシュを使用するが、現地では市販の蚊帳を加工して用いていた。治療成績的には大きく違いは無いらしく、これにより治療費を大幅に抑え、患者にとって現実的な医療を実現していた。高額な医療機器や資材に依存する日本の医療に対し、コスト削減と持続可能性の観点から学ぶべき点が多いと感じた。

文化・歴史体験

大学、医療機関だけでなく、カンボジア国立博物館や寺院、アンコールワット、ポル・ポト政権の虐殺跡地などにも訪れた。仏教国としての価値観や歴史的背景を学ぶことができた。大学で出会った学生に博物館を案内して頂いた日もあったのだが、現地の学生が自国の歴史や宗教に誇りをもって語る姿に感銘を受けた。加えて、ナイトマーケットや熱帯フルーツの食べ比べといった日常文化にも触れ、生活レベルでの理解も深めることができた。

<展望>

今回の遊学を通じ、発展途上国で医療活動を行うためには、専門分野の医学的知識だけでなく、文化的理解、言語能力、社会制度への洞察が不可欠であることを痛感した。特に、自国文化を正しく説明できる力や英語力の不足を強く認識した。今後は、医学の学習と並行して、日本史や文化、経済など幅広い分野の学びを深め、国際的な交流において多面的に対応できる力を養いたい。また、カンボジアの医療現場で学んだ「限られた資源で工夫する姿勢」や「地域社会に根ざした医療のあり方」は、医療費の高騰が問題となっている日本においても参考となる。私は今後、残りの学生生活での学びをこの経験に結び付け、将来は発展途上国と日本の双方で患者に寄り添える医師を目指していきたい。本遊学は、私の人生における大きな一歩となった。共に学んだ仲間や現地で出会った方々への感謝を胸に、目標実現に向けて精進していく所存である。
本遊学の機会を与えてくださった関係各位に深く感謝の意を表したい。ありがとうございました。

第14期生 中尾 涼太郎 長崎大学医学部

在福岡カンボジア王国名誉領事館

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