- 開館日 月曜日~金曜日
- 閉館日 土曜、日曜、日本の祝日
- 開館時間 9時半~12時半
年末年始、ゴールデンウィークなどの特別期間は、その都度お知らせします。
私がかかわってきた「JICA草の根技術協力事業」が2010年12月をもって終了しましたので、活動内容について報告したいと思います。
私が所属していた特定非営利活動法人TICOは、2008年1月からプノンペン市郊外、西部地区の低所得者層の人々が、事故や急病の際に診療所や救急車にアクセスできるよう、支援を行ってきました。
カンボジアでは経済発展が著しく、特にプノンペン市西部地区は、工場が数多く建設されています。工場で働くために移住してきた人々や市内のスラム地区中心部から移住させられてきた人々の居住地が拡大し、当地区は急激な人口増加等が原因で交通事故が多発していました。
2007年の国家交通安全委員会の報告書は、カンボジアにおいて交通事故はAIDSに次いで人命を奪う大きな要因だと言及しています。郊外に出張すると、必ずと言っていいほど交通事故を目撃したので、実際は報告書等の統計数字よりかなり多いと感じました。
カンボジアで交通事故が起こると、設備の整っていない私立の救急車が駆けつけて、救急車が所属する私立病院に搬送、高額費用を請求するということになります。しかし、お金がなさそうな人や、対応できそうにない重症患者は搬送せず、放置することもあります。事故に遭った人や目撃した人が「公立の救急車を呼ぼう!」ということにはなりません。どうしていいか分からず、「人だかりになる」、「ちゃんとした運び方が分からず、結果的に悪化させる」、「被害者から所持品(携帯電話等)を盗む」という事態が生じていました。
またプノンペン市郊外の人々が病気やケガをしたらどうするのかというと、例えば「気を失った人がいたら、その人の上を何度もまたいで飛び越え、魂が飛んでいかないようにする」、「火傷の際はガソリンや牛の糞を塗る」、「出血の際にタバコの葉や髪の毛をつめる」などなどです。実際に、火傷した子どもをそのまま放置したため、指同士がくっついてしまったのを目にしました。「水で冷やし、ひどい時は診療所へ」という発想はなかなか浮かばないようです。
そこで、住民が急な病気やケガをした時、自分で応急手当をするか、身近にある公立の診療所へ行ってもらう。重症の場合は公立の救急車を呼ぶようにするため、次の3つを柱とした活動を実施しました。
①保健省と共同で「病院・診療所のための救急対応ガイドライン」を作成し全国に配布
保健省職員や医療従事者でワーキンググループを編成し、カラー印刷で写真もふんだんに取り入れ、全25章から成るガイドラインを作成。全国の国立・公立病院、公立診療所や警察に配布しました。
②病院・診療所スタッフを対象にした基礎救急対応に関する知識と技術向上のための研修
医療従事者の知識や技術の向上とともに、指導者の育成にも取り組みました。訓練を受けた職員が、病院や診療所の同僚を指導する立場になること。また病院・診療所の対象エリアの保健ボランティアを指導、村人に対して初歩的な救急対応に関する啓発活動が行なえる人材となれるよう訓練してきました。
③地域住民に対する初歩的な救急対応の知識の普及
各村から保健ボランティアを選出し、初歩的な救急対応の知識普及活動のスキルを身につけてもらい、地域の診療所の医療関係スタッフと一緒になって村人への啓発活動を行なってきました。また、絵を多用したハンドブックを作成し、文字の読めない方でも理解できるようにしました。その他、Tシャツやステッカーを作成し、救急車の電話番号の普及を行いました。
「JICA草の根技術協力事業」は終了しましたが、今後は日本人医師の派遣やカンボジア人スタッフの招聘等によりフォローアップをする予定です。
◆「非営利特定活動法人 TICO」のカンボジア事業活動は次のホームページで紹介しています。
http://www.tico.or.jp/aboutTICO/activity/cambodia/activity.html
◆「JICA四国」のホームページでも活動内容を紹介しています。
http://www.jica.go.jp/shikoku/topics/2010/110125_01.html
写真(上) 交通事故現場での人だかり。次々と人が押し寄せて大渋滞。
写真(中) 村人への啓発マテリアル。左からTシャツ、ハンドブック、ステッカー、フリップチャート。
写真(下) 村人対象のワークショップの様子。学んだことを確認するため、簡単なクイズに手を挙げて回答してもらっています。